「イメージ」→「色調補正」から明るさを調整していませんか?
その方法では、画像を直接書き換えてしまいます。後から「やっぱり違った」と思っても、元には戻せません。
調整レイヤーを使えば、後からいつでも設定を変更できます。プロのレタッチで当たり前に使われている、非破壊編集の基本機能です。

調整レイヤーとは何か
普通の色調補正と何が違うんですか?
普通の色調補正は画像を直接変えます。調整レイヤーは「フィルター」を上に被せる感覚。画像自体は何も変わらないので、後から自由に調整できるんです。
直接補正 vs 調整レイヤー
| 項目 | 直接補正 | 調整レイヤー |
|---|---|---|
| 画像への影響 | 直接書き換え | 元画像は無傷 |
| 後からの変更 | 不可 | いつでも可能 |
| 取り消し | Ctrl+Zのみ | レイヤー削除で完了 |
| 部分適用 | 困難 | マスクで簡単 |
| ファイルサイズ | 増えない | やや増える |
調整レイヤーの仕組み
調整レイヤーは「透明なフィルター」のようなものです。
- 画像の上に調整レイヤーを追加
- 下にある画像の見え方が変わる
- 元画像は一切変更されない
- フィルターの設定はいつでも変更可能
レタッチのプロは「直接補正」をほとんど使いません。すべての補正を調整レイヤーで行い、後からいつでも調整できる状態を保っています。これが「非破壊編集」の考え方です。
調整レイヤーの追加方法
調整レイヤーを追加する方法は複数あります。
方法1: レイヤーパネルから
レイヤーパネル下部の「半月」アイコンをクリック → 目的の調整を選択
これが最も一般的な方法です。
方法2: メニューから
レイヤー → 新規調整レイヤー → 目的の調整を選択
レイヤー名を設定するダイアログが表示されます。
方法3: 色調補正パネルから
ウィンドウ → 色調補正 でパネルを表示
アイコンをクリックするだけで調整レイヤーが追加されます。

必須の調整レイヤー5選
Photoshopには多くの調整レイヤーがありますが、レタッチで頻繁に使うものは限られています。
1. トーンカーブ
最も強力で、最も使用頻度の高い調整レイヤーです。
できること:
- 明るさの調整
- コントラストの調整
- 色かぶりの修正
- 部分的な明暗調整
基本操作:
- 線を上に動かす → 明るくなる
- 線を下に動かす → 暗くなる
- S字カーブ → コントラストが上がる
- 逆S字カーブ → コントラストが下がる
「色調補正といえばトーンカーブ」です。これ一つでほとんどの補正ができます。レタッチャーを目指すなら、絶対にマスターすべき機能です。
2. レベル補正
トーンカーブよりシンプルで、直感的な明るさ調整ができます。
できること:
- 全体の明るさ調整
- 黒点・白点の設定
- 簡単なコントラスト調整
基本操作:
- 左のスライダー → 黒の基準点
- 中央のスライダー → 中間調の明るさ
- 右のスライダー → 白の基準点
初心者はまずレベル補正から始めるのがおすすめ。慣れてきたらトーンカーブに移行しましょう。プロはほとんどの場面でトーンカーブを使います。なぜなら、より細かい調整が可能だからです。
3. 色相・彩度
色を変えたり、鮮やかさを調整したりする機能です。
できること:
- 色相の変更(赤を青になど)
- 彩度の調整(鮮やか↔くすんだ)
- 明度の調整
- 特定の色だけ調整
基本操作:
- 色相スライダー → 色の種類を変更
- 彩度スライダー → 鮮やかさを調整
- 明度スライダー → 明るさを調整
特定の色だけ変えることもできるんですか?
できます。「マスター」の部分をクリックすると、「レッド系」「イエロー系」などが選べます。例えば空の青だけを濃くしたいときは「ブルー系」を選んで彩度を上げればOKです。
4. 明るさ・コントラスト
最もシンプルな調整レイヤー。初心者向けですが、プロも使います。
できること:
- 全体の明るさを上げ下げ
- コントラストを上げ下げ
使いどころ:
- ざっくりとした調整
- 最終的な微調整
- 他の調整と組み合わせ
5. カラーバランス
色かぶりの修正や、意図的な色味の追加に使います。
できること:
- シアン↔レッドのバランス
- マゼンタ↔グリーンのバランス
- イエロー↔ブルーのバランス
使いどころ:
- 色かぶり修正
- 夕焼け感の追加
- クールな雰囲気の演出
調整レイヤーの便利な機能
不透明度で効果を調整
調整レイヤーの不透明度を下げると、効果が弱まります。
- 100% → フル効果
- 50% → 半分の効果
- 0% → 効果なし(非表示と同じ)
「ちょっと効果が強すぎた」というときに便利です。
レイヤーマスクで部分適用
調整レイヤーには自動的にマスクが付いています。
- 白い部分 → 補正が適用される
- 黒い部分 → 補正が適用されない
ブラシで黒を塗れば、その部分だけ補正から除外できます。
実践例:人物だけ明るく
- トーンカーブで全体を明るく
- マスクを選択
- 人物以外を黒で塗る
- 人物だけが明るくなる

クリッピングマスク
特定のレイヤーだけに調整を適用したい場合に使います。
手順:
- 調整レイヤーを追加
- 調整レイヤーを右クリック →「クリッピングマスクを作成」
- 直下のレイヤーにだけ効果が適用される
合成作業で、素材ごとに色調補正したいときに便利です。
ブレンドモードの活用
調整レイヤーにもブレンドモードを設定できます。
よく使う組み合わせ:
- トーンカーブ + 輝度 → 色を変えずに明るさだけ調整
- 色相・彩度 + カラー → 色だけ変更
トーンカーブで明るさを調整すると、意図しない色の変化が起きることがあります。調整レイヤーのブレンドモードを「輝度」にすれば、明るさだけが変わり、色は維持されます。
実践:調整レイヤーを使ったレタッチフロー
実際のレタッチでは、複数の調整レイヤーを組み合わせて使います。
ポートレートの基本補正
- レベル補正 — 全体の明るさを調整
- トーンカーブ — シャドウを持ち上げ、ハイライトを抑える
- 色相・彩度 — 肌の彩度を少し下げる(自然に見える)
- カラーバランス — 肌に少し暖色を乗せる
風景写真の補正
- レベル補正 — コントラストを確保
- トーンカーブ — 空と地面を別々に調整(マスク使用)
- 色相・彩度 — 空のブルーを強調
- 明るさ・コントラスト — 最終調整
調整レイヤーの順序
調整レイヤーは上から下に適用されます。順序によって結果が変わることがあります。
一般的な順序:
- 基本的な明るさ調整(下)
- コントラスト調整
- 色の調整
- 最終調整(上)
よくある間違いと解決法
間違い1: 直接補正を使ってしまう
問題: 「イメージ」→「色調補正」から補正してしまう
解決策: 癖をつける。常に「レイヤー」→「新規調整レイヤー」またはレイヤーパネルの半月アイコンから。
間違い2: 調整が強すぎる
問題: コントラストや彩度を上げすぎて不自然に
解決策: 不透明度を下げる。50%から始めて、徐々に上げていく。
間違い3: 調整レイヤーが多すぎて管理できない
問題: 20個以上の調整レイヤーが乱立
解決策: グループにまとめる。「肌補正」「色調整」など目的別にフォルダ分け。
調整レイヤーは、多ければいいというものではありません。同じ種類の調整レイヤーが3つ以上あったら、1つにまとめることを検討しましょう。
トーンカーブを深掘り
調整レイヤーの中でも、トーンカーブは特に重要です。もう少し詳しく解説します。
ヒストグラムの読み方
トーンカーブの背景に表示されるグラフがヒストグラムです。
- 左側 → 暗い部分のピクセル量
- 右側 → 明るい部分のピクセル量
- 山が高い → その明るさのピクセルが多い
ヒストグラムを見れば、画像の明るさの分布がわかります。
ポイントの追加
カーブ上をクリックすると、ポイント(コントロールポイント)が追加されます。
- ポイントは最大14個まで
- ポイントを増やすと、より細かい調整が可能
- 基本は2〜3個で十分
RGBチャンネル別調整
トーンカーブは、RGBチャンネル別に調整できます。
- レッド — 上げると赤く、下げるとシアンに
- グリーン — 上げると緑に、下げるとマゼンタに
- ブルー — 上げると青く、下げると黄色に
色かぶりの修正や、カラーグレーディングに使います。
まとめ
調整レイヤーは、非破壊編集の基本機能です。
覚えるべき5つの調整レイヤー:
- トーンカーブ — 最も重要。明るさ・コントラスト・色、何でもできる
- レベル補正 — シンプルな明るさ調整。初心者向け
- 色相・彩度 — 色の変更、鮮やかさ調整
- 明るさ・コントラスト — 最もシンプル。最終調整に
- カラーバランス — 色かぶり修正、色味の追加
調整レイヤーの便利機能:
- 不透明度で効果の強さを調整
- レイヤーマスクで部分適用
- クリッピングマスクで特定レイヤーだけに適用
- ブレンドモードで効果を変える
「直接補正」は使わない。すべて「調整レイヤー」で。
この習慣をつけるだけで、レタッチの自由度と安心感が格段に向上します。後から「やっぱり変えたい」と思っても、調整レイヤーなら簡単にやり直せます。
今日から、色調補正は調整レイヤーで行いましょう。