Canva傘下のAffinityが、2025年10月の統合・無料化に続き、2026年3月16日にバージョン3.1をリリースしました。Light UIやLive Tone Blend Groupsといった待望の新機能が追加され、プロフェッショナルな写真編集・デザインツールとしての完成度がさらに高まっています。
この記事では、Affinityの無料化の背景から3月アップデートの新機能、そしてAdobe Creative Cloudとの比較まで、レタッチャー・フォトグラファーが知っておくべきポイントを整理します。
Affinity無料化の経緯と現在の立ち位置
Affinityの無料化はクリエイティブ業界に大きなインパクトを与えた
2024年にCanvaがSerif(Affinityの開発元)を買収し、2025年10月にAffinityシリーズ3製品を1つのアプリに統合して完全無料化しました。従来は別々に販売されていたAffinity Photo(写真編集)、Affinity Designer(ベクターデザイン)、Affinity Publisher(DTP・レイアウト)が、単一の「Affinity」アプリとして生まれ変わっています。
無料って、機能制限があるんじゃないですか?
ベクター、レイアウト、ピクセル編集の主要機能はすべて無料です。有料になるのはCanva AI Studio経由のAI機能(生成塗りつぶし、背景除去など)だけで、Canva Proプラン(月額1,500円程度)が必要になります。
ビジネスモデル:基本無料・AI有料
Canvaの戦略は明確です。Affinityのコア機能を無料で提供してユーザーベースを拡大し、AI機能で収益化するモデルといえます。
| 機能 | 無料 | Canva Pro(有料) |
|---|---|---|
| 写真編集(レイヤー・マスク・調整) | ○ | ○ |
| ベクターデザイン | ○ | ○ |
| ページレイアウト・DTP | ○ | ○ |
| RAW現像 | ○ | ○ |
| Canva AI生成塗りつぶし | × | ○ |
| Canva AI背景除去 | × | ○ |
| Canva AI画像拡張 | × | ○ |
Affinityを使うには無料のCanvaアカウントが必要です。Windows・macOS対応で、iPadOS版は近日リリース予定となっています。
v3.1アップデート(2026年3月16日)の注目機能
3月アップデートでUIとワークフローが大幅に改善された
2026年3月16日にリリースされたAffinity v3.1では、インターフェースと合成機能を中心に多数の改善が行われました。主要な新機能を見ていきましょう。
Light UI(ライトUIモード)
ユーザーからの要望が最も多かった機能の一つが、ついに実装されました。従来のダークテーマに加えて、明るいUIテーマが選択できるようになっています。カスタマイズにも対応しており、作業環境や好みに合わせた調整が可能です。
明るい環境で作業するフォトグラファーや、色の正確な判断が必要なレタッチ作業では、ダークUIだと目が疲れるという声がありました。Light UIの追加で、こうした課題が解消されるでしょう。
Live Tone Blend Groups
合成ワークフローを根本的に変える可能性がある新機能です。レイヤーをLive Tone Blend Groupに入れると、下のレイヤーとリアルタイムで非破壊的にブレンドされます。
従来はクリッピング調整レイヤーやチャンネル操作でトーンを手動で合わせる必要がありましたが、Live Tone Blend Groupsを使えばワンクリックで自然な合成が可能になります。ポートレート合成や商品写真の背景差し替えなど、合成作業が多いレタッチャーにとって大きな効率化が期待できます。
Convert to Curves(ピクセル→ベクター変換)
ピクセルの選択範囲を、編集可能なベクターカーブに即座に変換できる機能です。写真の一部をベクターアートワークに変換したい場合、手動でトレースする必要がなくなります。
シルエット、ロゴ風グラフィック、SNS用のカットアウト素材など、ピクセルからベクターへの変換が必要なシーンで作業時間を大幅に短縮できるでしょう。
その他の改善点
- ドキュメントタブ:コンテキストメニューやフロートオプション対応で、複数ファイルの切り替えがスムーズに
- ベクター/ピクセルビューの自動切り替え:作業内容に応じたビューが自動で割り当てられる
- ペンツールの強化:新しいショートカットとスマートノードで、ベクター描画の効率が向上
- スウォッチでのグラデーション/ハッチ直接編集
- オブジェクトキャプション:自動ナンバリング対応
- Tone Brushツール:トーン調整の新しいブラシツール
Adobe Creative Cloudとの比較
Adobe離れの選択肢としてAffinityの注目度が急上昇している
Affinityの無料化で最も影響を受けるのは、間違いなくAdobe Creative Cloudです。コスト面での比較を整理してみましょう。
| 項目 | Affinity | Adobe Creative Cloud |
|---|---|---|
| 価格 | 無料 | フォトプラン月額1,180円〜 / コンプリート月額7,780円 |
| 写真編集 | ○ | ○(Photoshop) |
| ベクターデザイン | ○ | ○(Illustrator) |
| DTP・レイアウト | ○ | ○(InDesign) |
| AI機能 | Canva Pro必要 | Adobe Firefly含む |
| RAW現像 | ○(基本的) | ○(Lightroom) |
| クラウドストレージ | Canva経由 | 20GB〜 |
| iPad対応 | 近日予定 | ○ |
- 主要機能がすべて無料で使える
- サブスクリプション不要(買い切りですらなく無料)
- Photo・Designer・Publisherが1アプリに統合され、切り替えが不要
- 動作が軽快でレスポンスが良い
- PSDファイルの読み込みに対応
- AI機能はCanva Pro(有料)が必要
- Lightroomに相当するRAW現像の専用ワークフローがない
- プラグイン・エクステンションのエコシステムがAdobeに比べて小さい
- 3Dやビデオ編集機能がない
- iPad版が未リリース(近日予定)
正直なところ、作業の90%がロゴ、SNSグラフィック、パンフレット制作であれば、Affinityで十分プロレベルの仕上がりが得られます。一方、大量のRAW現像やAdobe Senseiを活用した自動処理が必要なワークフローでは、まだAdobeに軍配が上がるでしょう。
レタッチャーにとっての実用性
Affinityの写真編集機能はプロの実務にも十分対応できる水準に達している
Affinityの写真編集機能(旧Affinity Photo相当)は、レタッチ業務で必要な主要機能をカバーしています。
対応しているレタッチ機能
- レイヤー・マスク・調整レイヤー:Photoshopと同等の非破壊編集
- 周波数分離:肌レタッチの定番テクニックに対応
- カーブ・レベル・HSL調整:色補正・トーン調整の基本ツール
- ブレンドモード:Photoshopと互換性のある合成モード
- バッチ処理:マクロ(アクション相当)による自動処理
- 32bitHDRマージ:HDR写真の合成
- PSD読み込み:既存のPhotoshopファイルとの互換性
PSDファイルの読み込みに対応しているため、クライアントからPhotoshop形式で素材を受け取っても問題なく開けます。ただし、複雑なスマートオブジェクトや一部のフィルター効果は完全互換ではない点に注意が必要です。
移行を検討すべき人
以下に当てはまる方は、Affinityへの移行で大きなメリットがあるでしょう。
- Adobe Creative Cloudの月額費用を削減したいフリーランス
- Photoshop・Illustrator・InDesignを併用しているが、高度な機能はあまり使わない方
- 副業や趣味でレタッチを始めたい方
- 学生・教育関係者
今後の展望とCanvaの戦略
CanvaによるAffinity統合は写真編集ソフトの勢力図を書き換える可能性がある
Canvaがプロ向けツールを無料で配布する背景には、クリエイティブソフトウェア市場でのシェア拡大という明確な狙いがあります。
Canvaはもともとノンデザイナー向けの簡易ツールでしたが、Affinityの買収・無料化によってプロフェッショナル市場にも本格参入しました。基本機能を無料で提供しつつ、Canva AI StudioやCanva Proの付加価値で収益を上げるフリーミアムモデルは、Adobeのサブスクリプション一辺倒のビジネスモデルに対するアンチテーゼといえます。
無料って、いつか有料に戻る可能性はないですか?
Canvaは公式に「Affinityを無料であり続ける」と明言しています。AI機能の有料化で収益を確保するモデルなので、コア機能が突然有料化される可能性は低いでしょう。ただし、将来的なポリシー変更の可能性はゼロではないので、その点は留意しておく必要があります。
Affinityの利用にはCanvaアカウントが必須です。Canvaのプライバシーポリシーやデータ利用規約に同意する必要があるため、企業で導入する場合は情報セキュリティ部門との確認をおすすめします。
まとめ
- AffinityはPhoto・Designer・Publisherが1アプリに統合され、完全無料で利用可能
- 2026年3月のv3.1アップデートでLight UI・Live Tone Blend Groups・Convert to Curvesなど実用的な新機能が追加
- AI機能のみCanva Pro(有料)が必要だが、レタッチの主要機能は無料の範囲でカバー
- PSD互換やバッチ処理にも対応しており、Adobe Creative Cloudの代替として現実的な選択肢
- まずは無料のCanvaアカウントで試してみて、自分のワークフローに合うか検証するのがおすすめ
写真編集・ベクターデザイン・DTPレイアウトのコア機能はすべて無料です。Canva AI Studio経由のAI機能(生成塗りつぶし、背景除去など)のみCanva Proプランが必要になります。
PSD形式の読み込みに対応しています。レイヤー構造やブレンドモードなど基本的な要素は維持されますが、複雑なスマートオブジェクトや一部のフィルター効果は完全互換ではありません。
v3.1の主要な新機能はLight UI(明るいテーマ)、Live Tone Blend Groups(リアルタイム非破壊合成)、Convert to Curves(ピクセルからベクターへの変換)の3つです。特にLive Tone Blend Groupsは合成ワークフローを大きく効率化します。
作業内容によります。ロゴ・SNSグラフィック・パンフレット制作が中心なら十分代替可能です。ただし、大量RAW現像(Lightroom相当)、3D・動画編集、Adobe固有のプラグインが必要な場合はAdobeが必要でしょう。導入前にワークフローの検証をおすすめします。レタッチワークフローの最適化についてご相談があれば、Retouch Inkにお気軽にお問い合わせください。
2026年3月時点ではWindows・macOSのみ対応で、iPadOS版は「近日リリース予定」と発表されています。具体的なリリース日は公式サイト(affinity.studio)で最新情報を確認してください。
参考:What's New in Affinity: Interface & Compositing Updates / Introducing the all-new Affinity - Canva Newsroom