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AIエージェント×レタッチ業務が想像以上にやばかった|現役レタッチャーのリアルな活用事例
ワークフロー

AIエージェント×レタッチ業務が想像以上にやばかった|現役レタッチャーのリアルな活用事例

2026-02-21
2026-04-06 更新

レタッチャーの時間を食っているのは、レタッチそのものではなく「周辺業務」です。メール検索、フォルダ作成、納品、メール作成……。弊社が実際にAIエージェントを導入して変わった7つの業務を、具体的なやり取りの例とともに紹介します。

レタッチャーの仕事は、写真の修正だけではありません。

クライアントとのメールのやり取り、ファイル整理、納品データのアップロード、修正指示の管理……。こうした「作業の周辺業務」が、実は膨大な時間を食っています。

弊社Retouch Inkでは2025年末から、AIエージェント(Anthropic社のClaude Code)をレタッチ業務のアシスタントとして導入しています。この記事では、実際の業務でどのように活用しているか、具体的なやり取りの例を交えてご紹介します

読者
読者

AIエージェントって、ChatGPTみたいなものですか?

佐藤(レタッチャー)
佐藤(レタッチャー)

ChatGPTは「チャットで質問に答える」のが中心ですが、AIエージェントは「実際にPCの操作を実行できる」のが大きな違いです。メールを検索する、フォルダを作る、ファイルをコピーする、Photoshopを操作する——こうした作業を、会話するだけでAIが代行してくれます。

記事内のデータについて

本記事に登場するクライアント名・担当者名・アーティスト名・カット番号・メール文面などは、すべて仮名・サンプルデータであり、実際の案件データではありません。実案件では機密性に応じてAIエージェントの利用範囲を制限し、特にNDA契約のあるクライアントについては後述のセキュリティ項目(Q6)の通りの対応を行っています。

導入サポートについて

クライアント側のお客様や同業のレタッチャー・フォトグラファーの方で「うちでも導入してみたい」という方がいらっしゃいましたら、導入のアドバイスやワークフロー構築のサポートも承っております。お気軽にお問い合わせください。

1. メールの検索・確認 —— 「あの素材、もらってたっけ?」をすぐ解決

レタッチャーの日常で多いのが、「クライアントからあの素材送られてきてたっけ?」「修正指示のDropboxリンクどこだっけ?」という場面です。

弊社では、Gmail APIと連携するプラグインを自作し、Claude Codeから直接メールを検索・閲覧できるようにしています。

実際のやり取り

佐藤
佐藤

明日納品の青山プロダクション・田中さんの案件、何か特別な指示ありましたっけ?

Claude
Claude

3件見つかりました。直近のメール(2/20 18:32)に以下の指示があります:
・メンバー全員の肌トーンを統一してほしい(照明ムラがあるため)
・センターの衣装のシワは残してOK(自然な印象にしたい)
・背景のグラデーションが左右で若干違うので均一に
・入稿サイズ:A2見開き(594×420mm)、解像度350dpi
・カラープロファイル:Japan Color 2011 Coated
・納品形式:PSD(レイヤー統合)+ TIFF
また、2/19のメールでDropboxリンクが共有されています。※「ロゴデータは決まり次第追って送ります」とのことで、まだ届いていないようです。

佐藤
佐藤

ロゴ来てないのか、先にレタッチ進めておこう。指示書のPDFもダウンロードしておいて

Claude
Claude

PDFを案件フォルダ files/ にダウンロード完了しました。

作業前に「指示の抜け漏れ確認」ができるのが大きなポイントです。わざわざGmailを開いてスレッドを遡る必要がなく、ターミナルで聞くだけでAIがAPI経由でメールを検索し、要点をまとめてくれます。

「あれ、ロゴデータもらってたっけ?」「入稿サイズ何だっけ?」——こうした細かい確認が、作業を中断せずにできるようになりました

2. 案件フォルダの自動作成 —— 命名規則を絶対に守る

レタッチ案件を受けるたびに、フォルダを作り、指示書を入れ、納品フォルダを用意し……という定型作業が発生します。弊社では命名規則を厳密に決めています。

形式:MMDD_案件概要_担当者様_8桁ハッシュ
例 :0220_アルバムブックレット レタッチ_田中様_87088cda

AIに「新しい案件フォルダ作って」と伝えると、この命名規則に沿ったフォルダが自動生成されます。ハッシュ値の付与、フォルダ内の構成もすべて自動です。

フォルダ構成

案件フォルダ/
├── 初稿/
│   ├── *.tif        ← 納品TIF
│   └── files/       ← 指示書・サマリー等
├── 修正1/
│   ├── *.tif
│   └── files/
└── 修正2/
    ├── *.tif
    └── files/

人間がやると「アポストロフィが入っちゃった」「ハッシュ忘れた」といったミスが起きますが、AIは命名規則を記憶しているので、毎回正確に作成してくれます。

3. 案件サマリーの自動生成 —— 散在する情報を1枚にまとめる

案件を受けると、クライアント名、アーティスト名、カット数、入稿予定日、レイアウト構成……さまざまな情報がメールやPDFに散在しています。

AIにメールやPDFの内容を読ませると、summary.mdとして案件の全体像を自動生成してくれます。

実際に生成されたサマリーの例

# アルバムブックレット レタッチ

## 基本情報
- クライアント: 田中 美咲(株式会社 青山プロダクション)
- アーティスト: ○○○○
- 依頼日: 2026-02-19
- 入稿予定: 2026-02-24(月)

## レタッチ対象カット(6点)
- IMG_0847(集合 / 5名)
- IMG_0988(ソロ / 山田 翔太)
- IMG_1062(ソロ / 佐藤 蓮)
- IMG_1160(ソロ / 鈴木 陸)
- IMG_1416(ソロ / 高橋 海斗)
- IMG_1507(ソロ / 中村 悠真)

これがあると、作業中に「このカット何のページ用だっけ?」と思ったときもすぐ確認できます。

正直なところ、以前はここまで丁寧なサマリーを作る余裕はありませんでした。案件の情報をメールやPDFから拾い集めて整理するだけで、それなりの時間がかかります。書きたくても、時間的に書けなかったのが実情です。

それがAIに任せれば、メールとPDFを読ませるだけで数秒で生成してくれます。クライアントにとっても「案件の全体像が一目でわかるサマリー」が毎回共有されるので、認識のズレや確認漏れが減り、双方にとって助かる仕組みになっています。

顔認識による自動判別も

事前にメンバーの顔写真を登録しておけば、AIが画像を見て「このカットに写っているのは山田翔太さんです」と人物を判別し、カット番号と名前を自動で紐づけることも可能です。グループのソロカットが数十枚ある場合でも、誰がどのカットかを手作業で確認する必要がなくなります。

4. Google Driveへの納品 —— ワンアクションで完了

レタッチが完了したら、TIFデータを共有ドライブにアップロードし、クライアントに共有リンクを送る必要があります。

実際のやり取り

佐藤
佐藤

これできたから、ドライブにコピーしてリンクもちょうだい

Claude
Claude

コピー完了しました。TIF 6枚(合計740MB)。
■ 0220_アルバムブックレット レタッチ_田中様_87088cda
初稿/
├── IMG_0847.tif(集合 / 5名)
├── IMG_0988.tif(ソロ / 山田 翔太)
├── IMG_1062.tif(ソロ / 佐藤 蓮)
├── IMG_1160.tif(ソロ / 鈴木 陸)
├── IMG_1416.tif(ソロ / 高橋 海斗)
└── IMG_1507.tif(ソロ / 中村 悠真)

6枚のTIF(合計740MB)のコピーも、リンク取得も、すべてターミナル上のやり取りで完結します。ブラウザでGoogleドライブを開いてドラッグ&ドロップして……という手間がなくなりました。

5. 納品メールの下書き作成 —— 過去のやり取りを踏まえて

納品時のメール作成も、AIに任せています。ポイントは、過去のメール履歴を踏まえた文面を作ってくれること

たとえば、直前にCGデータの問い合わせメールを送っていた場合、納品メールに「五月雨式にすみません」と一言添え、先に送った件にも触れた文面を提案してくれます。

AIが生成したメール例

田中様

お世話になっております。
五月雨式にすみません。

アルバムブックレットのレタッチ完了しましたので、納品いたします。

■ 納品内容(6点)
- IMG_0847(集合 / 5名)
- IMG_0988(ソロ / 山田 翔太)
- IMG_1062(ソロ / 佐藤 蓮)
- IMG_1160(ソロ / 鈴木 陸)
- IMG_1416(ソロ / 高橋 海斗)
- IMG_1507(ソロ / 中村 悠真)

■ 0220_アルバムブックレット レタッチ_田中様_87088cda
https://drive.google.com/drive/folders/xxxxx

なお、先ほどお送りした背景素材の件も、
ご確認いただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

フォルダ名をリンクの上に記載する、納品内容をカットごとにリストで添える、といった細かなルールもAIが覚えてくれているので、毎回指示する必要がありません。

読者
読者

納品メールって、そんなに手間ですか?

佐藤
佐藤

1通だけなら大した手間ではありません。でもこれが1日に何件も重なると、地味に時間を取られます。以前はドライブのリンクとフォルダ名だけを貼って送っていましたが、AIが自動で納品内容の一覧を添えてくれるようになってからは、クライアント側でも「どのカットが入っているか」がメール上ですぐ確認でき、ダウンロード前に過不足をチェックできるようになりました。結果として、「あのカットが入っていない」「ファイル名が違う」といった確認のやり取りが大幅に減っています。

6. Photoshopとの連携 —— AIがアクションを提案・実行

弊社独自の仕組みとして、Claude CodeからAdobe PhotoshopをUXPプラグイン経由で操作する「Claude PS Bridge」を構築しています。

仕組み

  1. AIがPhotoshopのbatchPlayコマンドをJSON形式で書き出す
  2. UXPプラグインが1.5秒ごとにそのファイルを監視
  3. 新しいコマンドを検出すると、Photoshop上で自動実行
  4. 実行結果がJSONで返ってくる

これにより、「このレイヤーにノイズを加えて」「調整レイヤーを追加して」といった指示を、AIがPhotoshopのスクリプトに変換して実行できます。

新人教育にも効果

弊社では頻出のレタッチ処理をPhotoshopアクションとして事前に整備しています。「手の赤みを抑える」「肌のテカリを均す」「目の充血を除去する」といった定番の処理です。

これが新人レタッチャーの教育に大きく役立っています。

実際のやり取り

新人
新人

この集合カット、照明の関係で手が赤くなってるんですけど…

Claude
Claude

弊社の「手の赤み補正」アクションで対応できます。処理内容:色相/彩度の調整レイヤーで赤〜マゼンタ域の彩度を下げ、マスクで手の範囲のみに適用します。実行しますか?

新人
新人

お願いします

Claude
Claude

完了しました。調整レイヤー「手の赤み補正」を追加しています。強すぎる場合は不透明度で調整してください。

従来は先輩レタッチャーが手を止めて横について教える必要がありましたが、AIが処理の選択から実行までガイドしてくれるため、新人が「最初の一歩」を踏み出すハードルは大きく下がりました。新人にとっても「聞きづらい」というプレッシャーがなくなり、自分のペースで作業を進められるようになっています。

AIに任せきりにはしない

ここで強調しておきたいのは、AIはあくまで定型処理の入口であり、レタッチの本質的な技術習得を代替するものではない、という点です。「なぜその色域を選ぶのか」「照明条件によって補正アプローチがどう変わるのか」「クライアントの曖昧な要望をどう解釈するか」といった判断力は、先輩レタッチャーとの対面のレビューや、自分で試行錯誤する経験を通じてしか身につきません。

弊社では、AIアクションを使った後も必ず先輩がチェック・フィードバックを行い、「なぜこの処理が選ばれたのか」「他にどんな選択肢があり得たか」を新人と一緒に確認するプロセスを残しています。AIに頼り切ったまま納品まで進める運用は行っていません。

7. 修正対応の追跡 —— 何回目の修正で何をしたか

レタッチ案件は修正が何度も入ることが珍しくありません。「修正4の集合カットで何を直したんだっけ?」と振り返りたいとき、AIはフォルダ構成やサマリーから即座に答えてくれます。

修正フォルダの命名規則(修正4_02202007 = 2/20 20:07に来た修正指示)により、いつ・何回目の修正かが一目でわかる構成になっています。

まとめ —— AIエージェントは「もう一人のアシスタント」

AIエージェントの導入で変わったのは、レタッチそのものではなく、レタッチの周辺業務です。

作業 Before After
メール検索 Gmailで手動検索 自然言語で質問
フォルダ作成 手動で命名・構成 一言で自動生成
納品アップロード ブラウザでD&D コマンド一発
共有リンク取得 Driveで右クリック API自動取得
納品メール作成 過去メールを見て手書き 履歴を踏まえて自動生成
案件サマリー 手動で整理 メール・PDFから自動生成
Photoshop操作 先輩が手取り足取り AIがアクション提案・実行

写真を美しく仕上げるのは、今も人間の仕事です。でも、その前後にある膨大な「段取り」は、AIが大幅に効率化してくれます。

レタッチャーこそ、AIエージェントの恩恵を受けられる職種の一つだと実感しています。

導入をお考えの方へ

「うちのワークフローにもAIエージェントを導入してみたい」という方は、Retouch Inkまでお気軽にお問い合わせください。レタッチ会社ならではの実務ノウハウをもとに、導入のアドバイスやワークフロー構築をサポートいたします。

よくある質問(記事のおさらい)

Q
Q1. AIエージェントとは何ですか?
A

ChatGPTのようなチャットAIとは異なり、実際にPCの操作を実行できるAIです。メール検索、ファイル操作、アプリの操作など、会話するだけで作業を代行してくれます。弊社ではAnthropic社のClaude Codeを使用しています。

Q
Q2. 導入にはプログラミングの知識が必要?
A

Gmail API連携やPhotoshopプラグインの構築にはプログラミング知識が必要です。ただし、フォルダ作成やサマリー生成など基本的な活用であればプログラミング不要で始められます。

Q
Q3. レタッチそのものにAIを使っている?
A

本記事で紹介しているのは周辺業務の効率化です。レタッチそのもののAIツールについては、自動レタッチツール比較記事で詳しく解説しています。

Q
Q4. どれくらいの効率化になった?
A

体感ベースでは、メール検索・フォルダ作成・納品・メール作成といった周辺業務の合計時間が、1案件あたり5〜15分程度短縮されています。特にフォルダ作成や納品メール作成は、以前は数分かかっていた作業が10〜30秒で完了します。なお、これは弊社の業務フロー(独自命名規則・複数案件並行・社内テンプレ未整備の状態からの導入)での体感値であり、すでにmacOSのAutomatorやテキスト展開ツール、Gmailテンプレート等で自動化が進んでいる環境では、ここまでの短縮効果は期待できない可能性があります。

Q
Q5. 料金はどれくらいかかる?
A

2026年2月時点のClaude Codeの料金プランは、Proプランが月額20ドル、Max 5xプランが月額100ドル、Max 20xプランが月額200ドルです。弊社はAI開発も手がけているため月額200ドルのMax 20xプランを使っていますが、本記事で紹介しているレベルの活用であれば、まずはProプラン(月額20ドル)から試して、レート制限に引っかかるようであればMax 5x(月額100ドル)にステップアップする運用がおすすめです。

Q
Q6. セキュリティは大丈夫?
A

Gmail APIやGoogle Drive APIはOAuth認証を使用しており、パスワードをAIに渡す必要はありません。ただし、案件データそのものがAIサービスに送信される点には注意が必要です。本記事で紹介しているクライアント名・アーティスト名・カット情報等はすべて仮名・サンプルであり、実案件のデータではありません。

また、NDA(秘密保持契約)を締結しているクライアントの案件では特に注意が必要です。Anthropic社の消費者向けプラン(Pro/Max)は、デフォルトでは入力データがモデル学習に利用される可能性があり、ゼロデータリテンション(ZDR)契約はEnterpriseプラン+API利用が前提です。NDA案件で本記事のような運用を行う場合は、(1) クライアントから明示的な同意を得る、(2) ZDR契約の結ばれたAPI / Bedrock経由で運用する、(3) タレント実名や顔写真などの機密性が極めて高いデータはAIに渡さない、といった対策が不可欠です。

弊社では、機密性の高い案件についてはAIエージェントを使用しないか、ローカル処理に切り替えるなど、案件ごとにデータの取り扱いを区分しています。

レタッチ外注ならRetouch Ink

Tags

AI ワークフロー 効率化 Claude
佐藤 この記事の筆者

佐藤

Retouch Info

情報系の大学卒業後、IT企業でシステムエンジニアとして3年勤務。趣味で始めた写真編集にのめり込みレタッチャーに転身。現在はRetouch Inkにてワークフロー効率化やAIツール導入を推進。

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