ChatGPT、Gemini、Claudeなど、生成AIが登場して約2年。
この短期間で、AIの性能は驚くほど向上しました。プログラミングの世界では「こういうアプリを作って」と指示すればベースのコードができる時代になっています。
レタッチ業界にも同じことが起きるんでしょうか?
正直、近い将来そうなると思っています。今日はその話をしましょう。
今のレタッチ業界の構図
現在、レタッチの仕事はこんな流れで発生しています。
Photoshopを使えない担当者 → Photoshopを使える人(レタッチャー)に依頼
「この写真の首の色を肌に合わせてください」「背景をもう少しぼかしてください」
こういった指示を出すこと自体は、Photoshopが使えなくてもできます。でも、実際に修正するにはスキルが必要。だから外注する。
この「スキルの壁」があるから、レタッチの仕事は成立しているわけです。
近い将来、何が起きるか
プログラミングで起きていることを考えてみてください。
以前は「アプリを作りたい」と思ったら、プログラミングを学ぶか、エンジニアに依頼するしかなかった。今は「こういうアプリ作って」とAIに指示すれば、ベースのコードができてしまう。
レタッチでも同じことが起きます。
「この写真の首の色を肌に合わせて」と自然言語で指示すれば、AIが修正してくれるツールが出てくるでしょう。いや、もう出始めています。
それって…レタッチャーの仕事がなくなるってことですか?
簡単な修正の仕事は、確実に減ると思います。
これがゲームチェンジャーな理由
なぜこれが大きな変化なのか。
「Photoshopが使える」という参入障壁が消えるからです。
今まで担当者は、自分でできないからレタッチャーに依頼していました。でも、AIツールがあれば自分で直せる。わざわざ外注する必要がない。
単純な色補正、簡単な修正、ちょっとした加工。こういった仕事は激減するでしょう。
実際、AIレタッチツールの性能は日々向上しています。背景の除去、肌の補正、オブジェクトの削除。数年前は考えられなかったクオリティが、ワンクリックで実現できるようになっています。
でも、最終的に正解を決めるのは人間
ただ、ここからが重要な話です。
AIは指示されたことはできます。「首の色を肌に合わせて」と言えば、合わせてくれる。
でも、「何が正解か」はAIには判断できない。
特にクリエイティブな分野では、正解は人間にしかわからないんです。
指示通りにやっても正解にたどり着かない
実際の仕事でよくあるケースをお話しします。
担当者から「ここをこう直してください」と指示が来る。その通りに修正して納品する。でも、クライアントの反応はイマイチ。追加の修正が入る。また直す。でもまたイマイチ。
何度やってもダメ。
これ、よくあるんです。
なぜこうなるかというと、担当者自身も「何が正解か」をうまく言語化できていないから。頭の中にあるイメージと、言葉で伝えられることにはギャップがある。だから「こうしてください」の通りにやっても、理想にたどり着かない。
プロのレタッチャーはどうするか
こういうパターンに陥ったとき、私はこうします。
お客さんの理想をイメージして、自分の判断で修正する。
担当者の言葉をそのまま受け取るのではなく、その奥にある「本当に求めているもの」を汲み取る。言葉にできていない理想のビジュアルを想像して、こちらの判断でやってみる。
これで正解にたどり着くことが多いんです。
それはAIにはできないですね…
そうなんです。AIは「この指示だと理想にたどり着けないな」とは思えない。「お客さんが本当に求めているのはこっちだ」という判断ができないんです。
AIツールが進化しても、人間は必要
結論です。
AIレタッチツールは確実に進化します。簡単な修正なら、Photoshopが使えない人でもできるようになる。それは間違いない。
でも、「何が正解か」を見極める力は、人間にしかありません。
- クライアントの言葉の奥にある本当の要望を汲み取る
- 「この指示通りだとダメだな」と判断する
- 時には指示を無視してでも、理想のビジュアルを実現する
これができるのは、経験を積んだ人間だけです。
レタッチャーに求められるスキルが変わる
だからレタッチャーは消えない。
ただし、求められるスキルは変わります。
「Photoshopが使える」は価値がなくなる。「正解がわかる」が価値になる。
技術的なスキルより、判断力。ツールの操作より、クリエイティブな目。
AIと共存するレタッチャーに必要なのは、そういう力なのだと思います。