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建築・不動産写真のレタッチ|パース補正と空の合成テクニック
テクニック

建築・不動産写真のレタッチ|パース補正と空の合成テクニック

「建物が傾いて見える」「空が曇りで印象が悪い」——建築・不動産写真特有の問題をレタッチで解決する方法を解説します。物件の魅力を最大限に引き出すテクニックを紹介。

建築・不動産写真には、人物写真とは異なる独自のレタッチ技術が必要です。

垂直線の補正、広角レンズの歪み修正、空の合成——これらをマスターすることで、物件の魅力を最大限に伝える写真に仕上げられます。

建築写真レタッチの特徴

お客さん
お客さん

建築写真のレタッチって、普通の写真編集と何が違うんですか?

レタッチャー
レタッチャー

最大の違いは「垂直・水平の正確さ」です。建物が傾いていると、それだけで不安定な印象を与えます。また、空の状態が物件の印象を大きく左右するのも特徴ですね。

建築写真で重視するポイント

  1. 垂直・水平 — 建物の線が傾いていないか
  2. パース(遠近感) — 広角による歪みの補正
  3. 空の印象 — 曇り空より青空が好まれる
  4. 明るさ・清潔感 — 物件の魅力を引き出す
  5. 不要物の除去 — 電線、ゴミ、通行人など

パース補正(垂直・水平の修正)

なぜ建物が傾いて見えるのか

カメラを上に向けて建物を撮影すると、建物の上部が狭く見える「あおり」が発生します。

これは広角レンズで撮影するほど顕著になり、建物が後ろに倒れているような不安定な印象を与えます。

Photoshopでのパース補正

方法1:変形 → 遠近法

  1. レイヤーをスマートオブジェクトに変換
  2. 編集 → 変形 → 遠近法
  3. 上の角を外側に広げて垂直を修正
  4. 必要に応じて上下を調整

方法2:Camera Raw / Lightroomの「変形」

  1. 変形パネルを開く
  2. 「垂直方向」スライダーで調整
  3. または「自動」で自動補正
「Upright」機能

Lightroom / Camera Rawの「Upright」機能を使うと、ワンクリックで垂直・水平を自動補正できます。「Auto」「垂直」「水平」「フル」から選択可能です。

補正時の注意点

  • 過度な補正は避ける — 完璧な垂直より自然さを優先
  • 切り抜かれる部分を考慮 — 補正で画像の端がカットされる
  • 元の構図を活かす — 撮影時から補正を想定しておく

広角レンズの歪み補正

レンズ歪みとは

広角レンズで撮影すると、画像の端に向かって直線が曲がる「樽型歪曲」が発生します。

建築写真では、この歪みが「壁が膨らんでいる」ように見え、不自然な印象を与えます。

歪み補正の方法

Photoshop の場合

  1. フィルター → レンズ補正
  2. 「カスタム」タブで歪みを調整
  3. または「自動補正」でレンズプロファイルを適用

Camera Raw / Lightroom の場合

  1. レンズ補正パネルを開く
  2. 「プロファイル補正を使用」にチェック
  3. 自動でレンズに応じた補正が適用される
レタッチャー
レタッチャー

レンズ補正は、パース補正の前に行うのが基本です。歪みを補正してから垂直を調整した方が、自然な仕上がりになります。

空の合成

なぜ空を合成するのか

建築・不動産写真では、空の状態が物件の印象を大きく左右します。

  • 曇り空 → 暗い、重い印象
  • 青空 → 明るい、爽やかな印象
  • 夕焼け空 → ドラマチック、高級感

撮影日の天気は選べないことも多いため、空の合成は建築写真では一般的なテクニックです。

空の素材

空の合成には、差し替え用の空素材が必要です。

  • 自分で撮影してストックしておく
  • ストックフォトサイトで購入
  • Photoshop 2021以降の「空を置き換え」機能

手動での空合成

1. 空を選択

  • 「選択範囲」→「空を選択」(Photoshop 2021以降)
  • または「色域指定」で空の青色を選択
  • 建物の境界は「選択とマスク」で調整

2. 空素材を配置

  • 空素材をドラッグ&ドロップ
  • 元の空の後ろ(下)に配置
  • サイズと位置を調整

3. 境界をなじませる

  • マスクの境界をぼかす
  • 建物との境界線に不自然さがないか確認
  • 必要に応じてブラシでマスクを調整

「空を置き換え」機能(Photoshop)

Photoshop 2021以降では、「空を置き換え」機能でワンクリック合成が可能です。

  1. 編集 → 空を置き換え
  2. 用意された空から選択、または自分の素材を使用
  3. 「エッジをシフト」「エッジをフェード」で境界を調整
  4. 「明るさ」「色温度」で空と建物をなじませる
空合成の注意点

光の方向に注意してください。建物に当たる光の方向と、空の雲や太陽の位置が矛盾していると不自然になります。

色調補正

建築写真の色調整ポイント

明るさ・コントラスト

  • 全体的に明るく、清潔感のある印象に
  • 影が暗すぎると「暗い物件」に見える
  • ハイライトは白飛びしない範囲で明るく

色温度

  • やや暖色寄りで温かみを出す
  • 青すぎると冷たい印象に
  • 室内は特に暖色で居心地の良さを演出

彩度

  • 控えめに調整(派手すぎは不自然)
  • 空の青、芝生の緑は効果的に強調
  • 建物の色は実物に近づける

室内写真の補正

室内写真は照明の色かぶりが発生しやすいです。

光源 色かぶり 補正方向
蛍光灯 緑〜青緑 マゼンタ方向へ
白熱灯 オレンジ 青方向へ
LED 様々 白い部分を基準に
窓光 暖色方向へ

複数の光源が混在する場合は、部分的なマスク処理で対応します。

不要物の除去

よくある除去対象

建築・不動産写真では、以下のような要素を除去することが多いです。

  • 電線・電柱 — 建物を横切る線
  • ゴミ・落ち葉 — 敷地内の清潔感
  • 通行人・車 — プライバシーと構図の問題
  • 工事中の要素 — 看板、足場など
  • 反射 — 窓への映り込み

除去テクニック

スポット修復ブラシ

  • 小さな点や短い線に効果的
  • 周囲のテクスチャを自動で馴染ませる

コンテンツに応じた塗りつぶし

  • 広い範囲の除去に
  • 選択範囲を作成して「編集」→「コンテンツに応じた塗りつぶし」

コピースタンプツール

  • 複雑なパターンの部分に
  • 繰り返しパターン(タイル、レンガ)の修復

パッチツール

  • 周囲の別の部分をコピーして置き換え
  • 床や壁など、面が続いている部分に効果的

電線除去のコツ

電線は建築写真で最も除去することが多い要素です。

  1. コピースタンプで大まかに消す
  2. 空の部分は「コンテンツに応じた塗りつぶし」が効果的
  3. 建物にかかる部分は丁寧にスタンプ
  4. 細い線は「スポット修復ブラシ」で
レタッチャー
レタッチャー

電線は、横に長いので一度に消そうとせず、短い区間に分けて処理すると自然に仕上がります。

外観・内観それぞれのポイント

外観写真

  • 垂直を優先 — 建物が傾いていないことが最重要
  • 空を魅力的に — 青空合成で印象アップ
  • 敷地全体を見せる — 庭、駐車場も整える
  • 影を明るく — 建物の全体像が分かるように

内観写真

  • 明るさ重視 — 暗い室内は印象ダウン
  • 色かぶり補正 — 照明による色の偏りを修正
  • 窓の処理 — 白飛びしすぎないよう調整、または外の景色を合成
  • 生活感の調整 — 必要に応じて小物を除去

窓からの眺め合成

室内から撮影すると、窓の外が白飛びすることが多いです。

解決方法

  1. 露出を変えて複数枚撮影(HDR用)
  2. 室内用と窓外用を別々に調整
  3. マスクで合成

または、窓外に別撮りの景色を合成する方法もあります。

不動産写真の注意点

過度な加工の問題

不動産写真は「物件を売る」ための写真ですが、実物とかけ離れた加工はトラブルの元です。

  • 部屋を実際より広く見せる歪み補正
  • 存在しない設備の合成
  • 周囲の建物を消す
  • 実際と異なる眺望を合成

これらは景品表示法に抵触する可能性があります。

許容される範囲

  • パース補正による垂直・水平の修正
  • 曇り空から青空への合成
  • 一時的なゴミ・車の除去
  • 色調補正による明るさ・清潔感の向上
  • 電線の除去
クライアントとの確認

どこまでの加工が許容されるかは、クライアント(不動産会社など)と事前に確認しておくことをおすすめします。

ワークフロー例

外観写真の基本手順

  1. RAW現像:露出、ホワイトバランスの調整
  2. レンズ補正:歪みの自動補正
  3. パース補正:垂直・水平の調整
  4. 空の合成:必要に応じて青空に差し替え
  5. 色調補正:明るさ、コントラスト、彩度
  6. 不要物除去:電線、ゴミなど
  7. 最終調整:全体のバランス確認

内観写真の基本手順

  1. RAW現像:露出、ホワイトバランスの調整
  2. 色かぶり補正:照明による偏りを修正
  3. パース補正:部屋の歪みを修正
  4. 窓の処理:白飛び調整または外景合成
  5. 明るさ調整:全体的に明るく
  6. 不要物除去:生活感のある小物など
  7. 最終調整:清潔感のある仕上げ

まとめ

建築・不動産写真のレタッチは、物件の魅力を正確に伝えるための技術です。

  • パース補正:垂直・水平を正しく
  • レンズ補正:広角の歪みを修正
  • 空の合成:印象を大きく左右する
  • 色調補正:明るく清潔感のある仕上げ
  • 不要物除去:電線、ゴミなどを除去
  • 過度な加工は避ける:実物との乖離に注意

これらの技術を使いこなして、物件の魅力を最大限に引き出す写真に仕上げましょう。

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