撮影後の写真処理、1枚ずつ手作業でやっていませんか?
100枚の写真に同じ処理を施す。毎回同じサイズにリサイズして保存する。——これを手作業でやると、膨大な時間がかかります。
一括処理(バッチ処理)を使えば、数時間の作業が数分で終わります。
この記事では、LightroomとPhotoshopの一括処理テクニックを徹底解説します。

一括処理とは何か
一括処理って、具体的に何ができるんですか?
同じ操作を複数のファイルに自動で適用する機能です。例えば「全部の写真をJPEGに変換して、長辺1200pxにリサイズ」という作業を、ボタン1つで100枚でも200枚でも処理できます。
一括処理が威力を発揮する場面
- 撮影後のRAW現像(同じ設定を複数写真に)
- Web用への書き出し(リサイズ、形式変換)
- ファイル名の一括変更
- 透かし(ウォーターマーク)の追加
- 特定のフィルター効果の適用
Lightroomでの一括処理
Lightroomは、大量の写真を効率的に処理するために設計されたソフトです。
方法1: 設定の同期
最も基本的な一括処理方法です。
手順:
- 1枚の写真を調整
- 調整済みの写真を選択したまま、他の写真も追加選択(Ctrl/Cmd + クリック)
- 「設定を同期」ボタンをクリック
- 同期する項目を選んで「同期」
| 同期できる項目 | 説明 |
|---|---|
| ホワイトバランス | 色温度、色かぶり補正 |
| トーン | 露出、コントラスト、ハイライト等 |
| 外観 | 明瞭度、彩度等 |
| HSL/カラー | 色相、彩度、輝度 |
| 効果 | ビネット、粒子 |
| レンズ補正 | 歪み、周辺光量 |
方法2: 自動同期
リアルタイムで複数写真に設定を反映します。
手順:
- 複数の写真を選択
- 現像モジュールで「自動同期」をON(同期ボタンを切り替え)
- 1枚を調整すると、選択中の全写真に即座に反映
同じ撮影条件の写真を一気に処理するなら、自動同期が最速。10枚選んで調整すれば、10枚同時に仕上がります。
方法3: コピー&ペースト
設定をコピーして、後から別の写真にペーストする方法。
ショートカット:
- Ctrl/Cmd + Shift + C:設定をコピー
- Ctrl/Cmd + Shift + V:設定をペースト
複数の写真を選択してペーストすれば、一括適用できます。
方法4: プリセットの一括適用
読み込み時にプリセットを適用することで、最初から調整済みの状態にできます。
手順:
- 「ファイル」→「写真とビデオを読み込み」
- 「読み込み時に適用」パネルで「現像設定」を選択
- 目的のプリセットを選ぶ
- 読み込み実行

Lightroomでの一括書き出し
現像が終わったら、一括で書き出します。
書き出しの基本
- 書き出す写真を選択
- 「ファイル」→「書き出し」(またはCtrl/Cmd + Shift + E)
- 設定を行い「書き出し」
書き出しプリセットを作る
よく使う設定はプリセットとして保存しておきましょう。
Web用プリセット例:
- 形式:JPEG
- 画質:80%
- サイズ:長辺2000px
- シャープ:画面用・標準
- メタデータ:著作権情報のみ
印刷用プリセット例:
- 形式:TIFF
- 色空間:Adobe RGB
- サイズ:元のサイズ
- シャープ:印刷用・標準
書き出しプリセットの保存
- 設定を完了した状態で
- 左パネルの「追加」をクリック
- プリセット名を入力して保存
次回からはプリセットを選ぶだけで同じ設定が適用されます。
Photoshopでの一括処理(バッチ)
Photoshopでも、アクションと組み合わせて一括処理ができます。
バッチ処理の基本
前提: 適用したい操作を「アクション」として記録しておく必要があります。
手順:
- ファイル → 自動処理 → バッチ
- 「アクション」で適用するアクションを選択
- 「ソース」で処理する画像のフォルダを指定
- 「実行後」で保存先と処理方法を指定
- 「OK」で実行
| 設定項目 | 説明 |
|---|---|
| セット | アクションが属するセット |
| アクション | 実行するアクション |
| ソース | 処理対象(フォルダ、開いているファイル等) |
| 実行後 | 処理後の動作(保存して閉じる、フォルダに保存等) |
バッチ処理で注意すべき設定
「開く」コマンドを無視
アクション内に「ファイルを開く」が含まれる場合、チェックを入れないと元のファイルが開いてしまいます。
「別名で保存」コマンドを無視
保存先をバッチ設定で指定する場合は、チェックを入れます。
バッチ処理は最初は設定がややこしいですが、一度覚えると手放せなくなります。「リサイズ→シャープ→JPEG保存」のような定型作業が、フォルダを指定するだけで全自動になります。
実践例:Web用リサイズのバッチ処理
Step 1: アクションを記録
- アクションパネルで新規アクション作成
- 記録開始
- 画像解像度で長辺1200pxに変更
- アンシャープマスクを適用
- 「Web用に保存」でJPEG品質80で保存
- 記録停止
Step 2: バッチ処理を設定
- ファイル → 自動処理 → バッチ
- 作成したアクションを選択
- ソースフォルダを指定
- 実行後:フォルダに保存
- OK
これで、フォルダ内の全画像が自動処理されます。

Bridge経由での一括処理
Adobe Bridgeを使うと、より柔軟な一括処理が可能です。
Bridgeの利点
- ファイルのプレビューを見ながら選択できる
- Camera Rawで一括現像できる
- Photoshopへの連携がスムーズ
Camera Rawでの一括処理
- Bridgeで複数のRAWファイルを選択
- 右クリック →「Camera Rawで開く」
- 左のフィルムストリップで全選択
- 1枚を調整
- 「同期」ボタンで全ファイルに適用
- 「完了」または「画像を保存」
ファイル名の一括変更
写真のファイル名を統一するのも、一括処理で行えます。
Lightroomでの方法
- ライブラリモジュールで写真を選択
- 「ライブラリ」→「写真の名前を変更」
- 命名規則を設定(例:撮影日_連番)
- 「OK」
命名テンプレート例
| 用途 | テンプレート例 | 結果例 |
|---|---|---|
| 日付+連番 | {撮影日}_{連番} | 20251210_001 |
| プロジェクト名 | Project_{連番} | Project_001 |
| クライアント納品 | ClientA_{日付}_{連番} | ClientA_20251210_001 |
一括処理のベストプラクティス
コツ1: 小規模でテスト
いきなり100枚に適用するのではなく、まず3〜5枚でテストしましょう。
問題がないことを確認してから本番実行。
コツ2: 元ファイルは残す
一括処理後のファイルは別フォルダに保存し、元ファイルは必ず残しておきます。
間違いがあっても、やり直せます。
コツ3: 命名規則を統一
処理後のファイル名は、わかりやすい規則で統一しましょう。
- 元ファイル名を含める
- 日付を含める
- 処理内容がわかる接尾辞(例:_web、_print)
コツ4: プリセット/アクションを育てる
よく使う処理は、プリセットやアクションとして保存。少しずつ改良して「自分だけのライブラリ」を作りましょう。
一括処理は強力ですが、間違った設定で実行すると、大量のファイルに問題が発生します。必ず小規模でテストしてから本番実行してください。
まとめ
一括処理は、レタッチ作業を劇的に効率化する機能です。
Lightroomでの一括処理:
- 設定の同期 — 調整済みの設定を他の写真に適用
- 自動同期 — リアルタイムで複数写真に反映
- コピー&ペースト — 設定を別の写真に貼り付け
- プリセット適用 — 読み込み時に自動適用
- 一括書き出し — 複数写真を一度に書き出し
Photoshopでの一括処理:
- バッチ処理 — アクションを複数ファイルに自動適用
- Bridge連携 — プレビューを見ながら選択・処理
「同じ作業を二度やらない」——これがプロの鉄則です。
一度設定を作れば、その後は何百枚でも自動で処理できます。最初の設定に時間をかけても、長い目で見れば圧倒的に効率的。
今日から、繰り返し作業を見つけたら「これは自動化できないか?」と考える習慣をつけましょう。