Photoshopのブレンドモード(描画モード)は全部で27種類。全部覚えようとして挫折した人も多いのではないでしょうか。
安心してください。レタッチの現場で日常的に使うのは、せいぜい6〜7種類です。
この記事では、レタッチで本当に必要なブレンドモードだけを厳選して解説します。

ブレンドモードとは何か
ブレンドモードって、結局何をしてるんですか?
レイヤーの重ね方を変える機能です。通常は上のレイヤーが下を隠しますよね。ブレンドモードを変えると、上下のレイヤーが「混ざり合う」んです。混ざり方のルールが27種類ある、というわけです。
ブレンドモードの基本概念
通常、レイヤーは上が下を覆い隠します。不透明度を下げれば、下のレイヤーが透けて見えます。
ブレンドモードは、もっと複雑な計算で2つのレイヤーを合成します。
- 明るい部分だけ合成
- 暗い部分だけ合成
- コントラストを上げながら合成
- 色だけ変えて合成
など、様々な「合成ルール」を選べます。
ブレンドモードの場所
レイヤーパネルの左上、「通常」と書かれたドロップダウンメニュー。これがブレンドモードです。
ショートカット:Shift + Alt(Mac: Option)+ モードの頭文字
例:
- スクリーン → Shift + Alt + S
- 乗算 → Shift + Alt + M
- オーバーレイ → Shift + Alt + O
レタッチで使うブレンドモード7選
27種類のうち、レタッチで実際に使うものだけを解説します。
1. 乗算(Multiply)
効果: 暗くする。重ねた色同士が掛け合わさる。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 結果 | 常に暗くなる |
| 白 | 何も起きない(透明になる) |
| 黒 | 完全な黒になる |
使いどころ:
- 影を描き足す
- 全体を暗くする
- 白背景の素材を合成(白が透明になる)
マーカーペンで重ね塗りする感覚です。色が重なるほど濃くなる。白背景のロゴを乗算で重ねれば、白が消えてロゴだけが残ります。
2. スクリーン(Screen)
効果: 明るくする。乗算の逆。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 結果 | 常に明るくなる |
| 黒 | 何も起きない(透明になる) |
| 白 | 完全な白になる |
使いどころ:
- 光を追加する
- フレアやグロー効果
- 暗い部分を持ち上げる
- 黒背景の素材を合成(黒が透明になる)
3. オーバーレイ(Overlay)
効果: 明暗のコントラストを強める。
- 暗い部分 → 乗算(より暗く)
- 明るい部分 → スクリーン(より明るく)
使いどころ:
- コントラスト強調
- テクスチャを重ねる
- 色味を乗せる
50%グレー(RGB: 128, 128, 128)は何も起きません。これを利用して、50%グレーで塗りつぶしたレイヤーをオーバーレイにして、白で塗れば明るく、黒で塗れば暗くできます。これがドッジ&バーンの基本原理です。
4. ソフトライト(Soft Light)
効果: オーバーレイより控えめなコントラスト強調
オーバーレイと似ていますが、効果がマイルドです。
使いどころ:
- 自然なコントラスト調整
- 肌に柔らかい影を入れる
- 色味を控えめに乗せる
オーバーレイとソフトライト、どう使い分けますか?
効果を強くしたいならオーバーレイ、自然に仕上げたいならソフトライト。肌のレタッチではソフトライトの方が使いやすいです。
5. カラー(Color)
効果: 色だけを変える。明るさはそのまま。
下のレイヤーの明るさを保ったまま、上のレイヤーの色相と彩度だけを適用します。
使いどころ:
- 色の変更(髪色、服の色など)
- 色被り修正
- カラーグレーディング
6. 輝度(Luminosity)
効果: 明るさだけを変える。色はそのまま。
カラーの逆。上のレイヤーの明るさだけを下に適用します。
使いどころ:
- 調整レイヤーの色シフトを防ぐ
- シャープネスを適用する際の色にじみ防止
- 明るさだけを調整したいとき
トーンカーブやレベル補正をかけると、意図しない色の変化が起きることがあります。調整レイヤーのブレンドモードを「輝度」にすれば、明るさだけが変わり、色は維持されます。
7. 通常(Normal)
当たり前すぎて見落としがちですが、「通常」も重要なブレンドモードです。
使いどころ:
- 不透明度と組み合わせて強度調整
- レイヤーマスクで部分適用

実践:ブレンドモードを使ったレタッチテクニック
テクニック1: ドッジ&バーンの基本
明暗を部分的に調整するドッジ&バーン。ブレンドモードを活用すれば、非破壊で自由自在に調整できます。
手順:
- 新規レイヤーを作成
- 「編集」→「塗りつぶし」→ 50%グレー
- ブレンドモードを「ソフトライト」または「オーバーレイ」に変更
- ブラシで白(明るく)または黒(暗く)を塗る
不透明度10〜20%程度の柔らかいブラシで、何度も重ねて塗るのがコツ。一発で決めようとせず、少しずつ調整していきます。
テクニック2: コントラスト強調
写真全体のコントラストを自然に上げる方法。
手順:
- 背景レイヤーを複製(Ctrl/Cmd + J)
- ブレンドモードを「ソフトライト」に変更
- 不透明度を30〜50%に調整
これだけで、コントラストが程よく上がります。
テクニック3: テクスチャの合成
紙のテクスチャやフィルムグレインを自然に重ねる方法。
手順:
- テクスチャ画像を配置
- ブレンドモードを「オーバーレイ」に変更
- 不透明度を調整
- 必要に応じてマスクで適用範囲を限定
テクニック4: 光の追加
窓から差し込む光、フレアなどを追加する方法。
手順:
- 新規レイヤーを作成
- 柔らかいブラシで白〜黄色を塗る
- ブレンドモードを「スクリーン」に変更
- 不透明度で強度調整
- 「ぼかし(ガウス)」で境界をなじませる
テクニック5: 色味の変更
服や髪の色を自然に変える方法。
手順:
- 新規レイヤーを作成
- 変えたい色を塗る
- ブレンドモードを「カラー」に変更
- レイヤーマスクで変更したい部分だけに適用
ブレンドモードのグループ分類
27種類のブレンドモードは、グループに分類されています。覚える必要はありませんが、理解の助けになります。
| グループ | 代表例 | 効果 |
|---|---|---|
| 暗くする系 | 乗算、焼き込み | 結果が暗くなる |
| 明るくする系 | スクリーン、覆い焼き | 結果が明るくなる |
| コントラスト系 | オーバーレイ、ソフトライト | 明暗差が強まる |
| 反転系 | 差の絶対値、除外 | 色が反転する |
| コンポーネント系 | カラー、輝度 | 色/明るさを個別に適用 |
「暗くしたい」なら暗くする系、「明るくしたい」なら明るくする系、「コントラスト」ならコントラスト系——このくらいの大分類を知っておくと、27種類から選ぶのが楽になります。
よく使うショートカット
ブレンドモードはショートカットで切り替えられます。全部覚える必要はありませんが、よく使うものだけ覚えておくと便利です。
| モード | Windows | Mac |
|---|---|---|
| 通常 | Shift + Alt + N | Shift + Option + N |
| 乗算 | Shift + Alt + M | Shift + Option + M |
| スクリーン | Shift + Alt + S | Shift + Option + S |
| オーバーレイ | Shift + Alt + O | Shift + Option + O |
| ソフトライト | Shift + Alt + F | Shift + Option + F |
| カラー | Shift + Alt + C | Shift + Option + C |
| 輝度 | Shift + Alt + Y | Shift + Option + Y |

ブレンドモードのよくある間違い
間違い1: いきなり効果を強くする
不透明度100%で適用すると、効果が強すぎることがほとんどです。
解決策: まず不透明度を20〜50%から始め、徐々に調整する。
間違い2: 全体に適用しすぎる
ブレンドモードの効果を全体に適用すると、不自然になりがちです。
解決策: レイヤーマスクを使って、必要な部分だけに適用する。
間違い3: 27種類全部試そうとする
時間の無駄です。
解決策: まず「乗算」「スクリーン」「オーバーレイ」「ソフトライト」の4つだけ覚える。慣れたら「カラー」「輝度」を追加。それで十分です。
正直、この記事で紹介した7つ以外はほとんど使いません。まずは基本の4つを使いこなせるようになることが大事です。
まとめ
ブレンドモードは全27種類ありますが、レタッチで本当に使うのはほんの一握りです。
まず覚えるべき4つ:
- 乗算 — 暗くする。影を描く。白が透明に。
- スクリーン — 明るくする。光を描く。黒が透明に。
- オーバーレイ — コントラスト強調。テクスチャ合成。
- ソフトライト — 控えめなコントラスト。自然な調整。
余裕があれば覚える2つ:
- カラー — 色だけ変える
- 輝度 — 明るさだけ変える
27種類を全部覚える必要はありません。
この6つを使いこなせれば、レタッチで困ることはほとんどありません。まずは基本の4つから始めて、実際の作業の中で少しずつ理解を深めていきましょう。