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Photoshop Camera Raw徹底解説|RAW現像からフィルターまで完全マスター
ツール・テクニック

Photoshop Camera Raw徹底解説|RAW現像からフィルターまで完全マスター

「RAW現像って難しそう」——そう思っていませんか?Camera Rawを使えば、JPEGでは不可能な高品質な補正が誰でも簡単にできます。Lightroomと同じエンジンを持つこの強力なツールの使い方を徹底解説。

撮影した写真、JPEGのまま補正していませんか?

RAWデータには、JPEGの何倍もの情報が記録されています。白飛びした空、暗く潰れた影——JPEGでは救えない部分も、RAW現像なら驚くほど復元できます

PhotoshopのCamera Rawは、RAW現像から高度な色調補正まで、プロレベルの編集を可能にするツールです。

夕暮れの風景

Camera Rawとは何か

読者
読者

Camera Rawって、Lightroomとは何が違うんですか?

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実は中身は同じです。Camera RawとLightroomは同じ現像エンジンを使っています。だから操作画面も似ているし、現像結果も同じ。違いは「写真管理機能の有無」だけです。
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Camera Rawの位置づけ

Camera Rawは、Photoshopに標準搭載されているプラグインです。

  • Lightroom — 写真管理 + RAW現像
  • Camera Raw — RAW現像のみ(Photoshopとの連携に特化)

Photoshopをインストールすると、自動的にCamera Rawもインストールされます。追加料金は不要です。

RAWデータとは

RAWデータは、カメラのセンサーが捉えた情報をほぼそのまま記録したファイルです。

項目 JPEG RAW
色情報 8bit(約1677万色) 12〜14bit(数兆色)
ファイルサイズ 小さい 大きい
編集の自由度 限定的 非常に高い
白飛び/黒つぶれ 復元困難 復元可能
RAWは「デジタルネガ」

RAWデータはフィルムカメラの「ネガ」に相当します。そのままでは見れませんが、現像することで最終的な写真になります。現像のやり方次第で、同じRAWから全く違う雰囲気の写真を作れます。

Camera Rawの開き方

Camera Rawを使う方法は複数あります。

方法1: RAWファイルを直接開く

RAWファイル(.CR2、.NEF、.ARWなど)をPhotoshopで開くと、自動的にCamera Rawが起動します。

  1. ファイル開く でRAWファイルを選択
  2. Camera Rawの編集画面が表示される
  3. 編集後「開く」でPhotoshopに送る

方法2: Camera Rawフィルターを使う

JPEGや既存のレイヤーにも、Camera Rawの機能を適用できます。

  1. 画像をPhotoshopで開く
  2. レイヤーをスマートオブジェクトに変換(推奨)
  3. フィルターCamera Rawフィルター
  4. 編集後「OK」で適用
レタッチャー
レタッチャー

Camera Rawフィルターはスマートオブジェクトと組み合わせるのがおすすめ。後から設定を変更できるので、クライアントの修正依頼にも柔軟に対応できます。

方法3: Bridgeから開く

Adobe Bridgeを使えば、複数のRAWファイルをまとめてCamera Rawで開くこともできます。

美しい建物

Camera Rawの基本パネル

Camera Rawの編集画面には、多数の調整パネルがあります。基本的なパネルから解説します。

基本補正

最も使用頻度の高いパネルです。

ホワイトバランス

  • 色温度:青〜黄色の調整
  • 色かぶり補正:緑〜マゼンタの調整

トーン

  • 露光量:全体の明るさ
  • コントラスト:明暗の差
  • ハイライト:明るい部分の調整
  • シャドウ:暗い部分の調整
  • 白レベル:最も明るい部分
  • 黒レベル:最も暗い部分

外観

  • テクスチャ:細部の質感
  • 明瞭度:中間調のコントラスト
  • かすみの除去:霞んだ写真をクリアに
  • 自然な彩度:肌色を保ちながら彩度アップ
  • 彩度:全体の彩度
ハイライトとシャドウの魔法

RAWデータなら、ハイライトを-100にすれば白飛びした空が復活し、シャドウを+100にすれば潰れた影にディテールが戻ります。これはJPEGでは絶対にできない補正です。

トーンカーブ

より細かいトーン調整ができます。

  • パラメトリックカーブ — スライダーで直感的に調整
  • ポイントカーブ — ポイントを追加して自由に調整
  • RGB個別 — 赤・緑・青のチャンネル別に調整

HSL/カラー

特定の色だけを調整できます。

  • 色相 — 色の種類を変更(青を紫に、など)
  • 彩度 — 特定色の鮮やかさ
  • 輝度 — 特定色の明るさ
読者
読者

空の青だけを濃くしたい、とかできるんですか?

レタッチャー
レタッチャー

できます。HSLパネルで「ブルー」の彩度を上げれば、空だけ鮮やかになります。肌の色に影響せず、特定の色だけ調整できるのがHSLの強みです。

マスク機能:部分補正の革命

2024年以降のCamera Rawは、AI搭載のマスク機能が大幅に進化しています。

AI自動選択マスク

被写体を選択
人物や物体を自動検出して選択

空を選択
空の部分だけを自動選択

背景を選択
被写体以外を自動選択

Landscapeマスク(2025年新機能)
山、木、水、建物など、風景要素を個別に自動選択

マスクの使い方

  1. 「マスキング」パネルを開く
  2. 「新規マスクを作成」をクリック
  3. 「被写体を選択」などを選ぶ
  4. AIが自動でマスクを作成
  5. そのマスクに対して補正を適用

人物だけ明るくする、空だけ青くする、といった部分補正が数クリックで完了します

手動マスクツール

  • ブラシ — 塗った部分にマスクを作成
  • 線形グラデーション — グラデーションでマスク
  • 円形グラデーション — 円形のマスク
  • 範囲マスク — 色や輝度で選択範囲を絞り込み

都市の景色

2025年の新機能

Generative Expand(生成拡張)

AI搭載の画像拡張機能。写真の境界を自然に拡張できます。

  1. 切り抜きツールで元画像より大きな範囲を設定
  2. 「生成拡張」を選択
  3. AIが周囲の内容を生成して埋める

Landscapeマスク

2025年4月に追加された機能。風景写真の要素を自動認識します。

  • — 空の部分
  • — 山や丘
  • — 海、湖、川
  • 植物 — 木、草、森
  • 建物 — 建築物

風景写真のレタッチが劇的に効率化されました。

AIの進化が止まらない

Camera Rawは2024年以降、AI機能が急速に進化しています。数年前は手動でマスクを塗っていた作業が、今やワンクリック。定期的にアップデートをチェックして、新機能を活用しましょう。

Camera RawとLightroomの使い分け

両者は同じ現像エンジンを持つため、現像機能に違いはありません。使い分けのポイントは以下の通りです。

Camera Rawを使うべき場面

  • 数枚の写真を丁寧に仕上げたい
  • レタッチ前の下処理として使いたい
  • Photoshopで合成・レタッチを続けて行う
  • スマートオブジェクトと連携したい

Lightroomを使うべき場面

  • 大量の写真を管理・セレクトしたい
  • 同じ設定を多数の写真に一括適用したい
  • カタログで写真を整理したい
  • 写真のキーワード検索をしたい
レタッチャー
レタッチャー

プロの現場では両方使います。大量の写真はLightroomでセレクト・一括現像、選ばれた数枚をPhotoshop(Camera Raw)で丁寧に仕上げる、という流れが一般的です。

実践:Camera Rawでのポートレート現像

実際のワークフローを例に、Camera Rawの使い方を解説します。

Step 1: ホワイトバランスを合わせる

まず色味を整えます。

  1. スポイトツールでグレー部分をクリック
  2. または「色温度」「色かぶり」スライダーで手動調整
  3. 肌色が自然に見えることを確認

Step 2: 露出を調整

全体の明るさを決めます。

  1. 露光量で全体の明るさを調整
  2. ハイライトを下げて白飛びを抑える
  3. シャドウを上げて暗部を持ち上げる
  4. 白レベル・黒レベルで最終調整

Step 3: 被写体マスクで顔を明るく

AIマスクを活用します。

  1. 「マスキング」→「被写体を選択」
  2. 人物が自動選択される
  3. 露光量を少し上げる
  4. 肌が明るく、背景はそのまま

Step 4: 背景を調整

  1. 新しいマスクで「背景を選択」
  2. 露光量を下げて背景を少し暗く
  3. 被写体が引き立つ

Step 5: 全体の仕上げ

  1. 明瞭度を少し下げて柔らかく
  2. 自然な彩度で色味を調整
  3. 必要に応じてトーンカーブで微調整

プリセットで効率化

よく使う設定は「プリセット」として保存できます。

プリセットの作成

  1. 好みの設定に調整
  2. プリセットパネルの「…」→「プリセットを作成」
  3. 保存する項目を選択
  4. 名前をつけて保存

プリセットの適用

  1. プリセットパネルで目的のプリセットをクリック
  2. ワンクリックで設定が適用される
プリセットの使いどころ

「基本補正だけのプリセット」「カラーグレーディングのプリセット」など、用途別に分けて作っておくと便利。複数のプリセットを重ねて適用することで、柔軟な調整ができます。

よくあるトラブルと解決法

RAWファイルが開けない

原因: Camera Rawのバージョンが古い、またはカメラが新しすぎる

解決策:

  • Photoshop/Camera Rawを最新版にアップデート
  • Adobe DNG Converterで.dng形式に変換

色が違って見える

原因: カラープロファイルの問題

解決策:

  • Camera Rawの出力プロファイルを確認(通常はsRGBまたはAdobe RGB)
  • モニターのキャリブレーションを確認

動作が重い

原因: 高解像度RAWファイル、またはPCスペック不足

解決策:

  • Camera Raw環境設定でキャッシュサイズを増やす
  • パフォーマンス設定で「GPUを使用」を確認
  • 不要なアプリを閉じてメモリを確保

まとめ

Camera Rawは、Photoshopに標準搭載されているRAW現像ツールです。

  • Lightroomと同じエンジン — 現像機能は全く同じ
  • 基本補正 — 露出、ホワイトバランス、トーンを直感的に調整
  • AIマスク — 被写体、空、背景をワンクリック選択
  • スマートオブジェクト連携 — 後から設定を変更可能

RAWで撮影し、Camera Rawで現像する——これがプロのワークフローの基本です。

JPEGでは「撮った瞬間」に多くの情報が失われます。RAWなら、その情報を最大限に活かして、理想の写真に仕上げることができます。

まだRAWで撮影していないなら、今日からRAW+JPEGで撮ってみてください。Camera Rawで現像する楽しさと、その可能性の広さを実感できるはずです。

人物レタッチのプロにお任せください