Capture Oneが2025年10月にリリースしたバージョン16.7は、レタッチャーやフォトグラファーにとって過去最大級のアップデートと言えるかもしれません。
長年ユーザーが要望してきた「マスク結合」がついに実装され、AIポートレートレタッチは歯・目・首にまで拡張。さらに16.7.2ではPhotoshopへのマスク書き出しにも対応し、RAW現像とピクセル編集のワークフローがシームレスにつながるようになりました。
この記事では、Capture One 16.7〜16.7.3の主要な新機能を実践的に解説します。
マスク結合(Combine Masks)
長年の制約がついに解消
Capture One 16.7最大の目玉はマスク結合機能です。これまでCapture Oneでは、1つの調整レイヤーに1つのマスクしか設定できないという制約がありました。たとえば「AIで検出した空 + ブラシで微調整」という操作をするには、別々のレイヤーを作る必要があったのです。
16.7では、1つのレイヤー内で複数のマスクを組み合わせられるようになりました。
具体的にどういう操作ができるようになったんですか?
たとえば、AIマスクで「人物の肌」を選択し、そこからブラシマスクで「目と口の周辺」を除外する——これが1つのレイヤーでできます。Layers & Masksツールに追加された「Combine Masks」ボタンから、Add(追加)・Subtract(除外)・Intersect(交差)の3つの操作が選べます。
対応するマスクの種類
マスク結合は、Capture Oneで使えるすべてのマスクタイプに対応しています。
| マスクタイプ | 説明 | 結合対応 |
|---|---|---|
| AIマスク(Subject, Background, People) | AI自動検出 | ○ |
| ブラシマスク | 手描き | ○ |
| グラデーションマスク | 直線的な範囲選択 | ○ |
| ルミノシティマスク | 輝度ベースの選択 | ○ |
| カラーエディターマスク | 色域ベースの選択 | ○ |
風景写真で「空だけ」に調整を加えたい場合、AIマスクで空を選択し、グラデーションマスクをSubtractで重ねて地平線付近のエッジを微調整する——といった使い方が1レイヤーで完結します。レイヤー数が減ることで、処理も軽くなり、管理もシンプルになります。
AIポートレートレタッチの拡張
歯・目・首の個別調整
16.7では、AIを活用したポートレートレタッチツールが大幅に拡張されました。
| ツール | できること |
|---|---|
| Retouch Teeth | 歯の明るさ調整・脱彩度(ホワイトニング効果) |
| Retouch Eyes | 虹彩の明るさ・コントラスト調整、白目の明るさ・脱彩度 |
| Include Neck Area | 首にもBlemish Removal・Even Skinを適用 |
目のレタッチって、不自然にならないんですか?
そこがCapture Oneのこだわりです。虹彩の明るさ・コントラストを上げても、色の彩度は大きく変わらない仕組みになっています。さらに白目を調整しても、細い血管のディテールは保持されるので、リアルな仕上がりが維持されます。「やりすぎ感」が出にくい設計になっていますね。
LightroomにもAIマスクによるポートレートレタッチ機能はありますが、歯・目の個別調整パネルがあるのはCapture Oneの方が先行しています。Lightroomは肌の滑らかさ調整に強く、Capture Oneは目・歯・首という個別部位の細かい調整に強い——という棲み分けになっています。
Photoshopマスク書き出し(16.7.2〜)
RAW現像からピクセル編集へのシームレスな連携
16.7.2で追加されたPhotoshopへのマスク書き出し機能は、レタッチワークフローを大きく変える可能性があります。
Capture Oneで作成したマスク(AIマスク、ルミノシティマスク、ブラシマスク含む)を、PSD/PSBファイルのアルファチャンネルとして書き出せるようになりました。
実際の作業フローでどう使うんですか?
たとえば、Capture Oneで丁寧に作ったAIマスク(人物の髪の毛の精密な選択など)を、Photoshopに持ち込んで合成やレタッチに使えます。これまではCapture Oneで現像→Photoshopで再度マスクを作り直す必要がありましたが、その二度手間がなくなりました。
マスク書き出しはPSD(Photoshop Document)とPSB(Large Document Format)の両方に対応。アルファチャンネルとして保存されるため、Photoshop側ではチャンネルパネルから選択範囲として読み込めます。
コンタクトシート機能
ベータから正式版へ(16.7.3)
16.7で導入されたコンタクトシート機能が、16.7.3(2026年2月4日リリース)で正式版になりました。
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| グリッドレイアウト | 行・列・間隔をカスタマイズ可能 |
| 書き出し形式 | JPEG / PDF |
| ヘッダー・フッター | カスタム画像を挿入可能(ロゴ等) |
| カバーページ | 表紙画像を設定可能 |
| ブランディング | スタジオ・クライアント別のテンプレート化 |
クライアントへの写真セレクション提出や、スタジオの成果物カタログ、撮影のリファレンスシートなど、プロの現場で求められていた機能がカバーされています。
Lightroomにも「プリントモジュール」でコンタクトシートが作れますよね?
はい。ただしCapture Oneのコンタクトシートはブランディング要素(ロゴ、ヘッダー/フッター、カバーページ)が充実しているのが違いです。商業スタジオやECの撮影現場では、クライアント名とスタジオのロゴが入ったPDFで納品セレクトを送る——というワークフローが多いので、そのニーズに直接応えています。
レイヤーコピーの強化(16.7.3)
16.7.3では、レイヤーをコピーする際に3つのオプションが選べるようになりました。
- Replace(置換):コピー先の既存レイヤーを上書き
- Skip(スキップ):同名レイヤーがある場合はスキップ
- Duplicate(複製):同名でも新しいレイヤーとして追加
これにより、テンプレートとなるレイヤー設定を複数の画像に一括適用する作業がより柔軟になりました。大量の写真を同じトーンで仕上げたい場合に特に効果を発揮します。
Capture One 16.7はどんな人向き?
- Capture One 16.7のメリット
- マスク結合で複雑な選択範囲を1レイヤーで管理
- AIポートレートレタッチが歯・目・首まで拡張
- Photoshopへのマスク書き出しでワークフロー効率化
- コンタクトシートでクライアント対応が改善
- テザー撮影との連携が業界最高レベル
- Capture One 16.7の注意点
- サブスクリプション価格がLightroomより高い(月額約2,500円〜)
- 学習コストがLightroomより高め
- Adobeエコシステム(Photoshop+Lightroom)との統合度ではAdobe有利
- カタログ管理はLightroomの方が直感的
Capture OneとPhotoshopの連携が強化されたことで、RAW現像→レタッチのワークフローがスムーズになりました。特に大量のポートレート撮影を処理する現場では、Capture OneのAIレタッチで80%の仕上げを行い、残りの20%をPhotoshopで仕上げるという効率的なフローが組めます。プロのレタッチワークフロー構築については、Retouch Inkのような専門チームに相談するのも選択肢の一つです。
まとめ
- Capture One 16.7の目玉はマスク結合——AI+ブラシ+グラデーションを1レイヤーで
- AIポートレートレタッチが歯・目・首に拡張。自然な仕上がりを保つ設計
- 16.7.2でPhotoshopマスク書き出し対応。RAW現像→ピクセル編集がシームレスに
- コンタクトシートが正式版に。ブランディング要素付きでプロ向け
- 16.7.3でレイヤーコピーが置換・スキップ・複製の3オプション対応
よくある質問(記事のおさらい)
1つの調整レイヤー内で複数のマスク(AI、ブラシ、グラデーション等)を組み合わせられる機能です。Add(追加)・Subtract(除外)・Intersect(交差)の3操作で、従来は複数レイヤーが必要だった作業が1レイヤーで完結します。
歯のホワイトニング(明るさ・脱彩度調整)、目の調整(虹彩の明るさ・コントラスト、白目の明るさ)、首へのBlemish Removal・Even Skin適用が可能です。細部のディテールを保持する設計で、自然な仕上がりになります。
16.7.2以降で対応。Capture Oneで作成したAIマスクやブラシマスクを、PSD/PSBのアルファチャンネルとして書き出せます。Photoshop側でチャンネルから選択範囲として読み込み、合成やレタッチに使えます。
Capture Oneはマスク結合、テザー撮影、ポートレート部位別調整(歯・目・首)で優位。LightroomはAdobeエコシステムとの統合、カタログ管理の直感性、価格の安さで優位です。ポートレートやスタジオ撮影が多いならCapture One、汎用的に使いたいならLightroomが向いています。
サブスクリプションは月額約2,500円〜(プランにより異なる)。Adobe Photography Plan(Lightroom + Photoshop、月額約1,180円)と比較すると割高ですが、テザー撮影やスタジオワークフローを重視するプロフォトグラファーには投資価値があります。