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食品・料理写真のレタッチ術|美味しそうに見せる色補正のコツ
テクニック

食品・料理写真のレタッチ術|美味しそうに見せる色補正のコツ

「写真だと美味しそうに見えない」——料理写真は撮影だけでなく、レタッチで大きく印象が変わります。飲食店メニュー、ECサイト、SNSで使える食品レタッチのテクニックを解説します。

料理写真で一番大切なのは、「美味しそう」という印象を与えることです。

実際に美味しい料理でも、写真の色が悪いと食欲をそそりません。逆に、適切なレタッチで「食べたい!」と思わせる写真に仕上げることができます。

食品写真レタッチの基本

お客さん
お客さん

料理写真って、普通の写真と何が違うんですか?

レタッチャー
レタッチャー

「美味しそう」という感情に訴えかける必要があるのが大きな違いです。色の印象が売上に直結するので、暖色系の色味や、ツヤ・質感の表現が特に重要になります。

食品写真で重視するポイント

  1. 色温度 — 暖色系で美味しそうに
  2. 彩度 — 食材の色を鮮やかに
  3. ツヤ・テリ — 新鮮さ、ジューシーさを表現
  4. シャドウ — 立体感を出しつつ暗くなりすぎない

避けるべき表現

  • 青みがかった色味(不健康な印象)
  • 彩度が低すぎる(鮮度が悪く見える)
  • 暗すぎる影(料理が見えない)
  • 不自然な色(加工感が強すぎる)

色温度の調整

なぜ暖色系が美味しそうに見えるか

人間の脳は、暖色系(オレンジ・赤・黄色)を「食べ物の色」として認識しています。

  • 焼き色 → 香ばしさ
  • オレンジ → 熟した果物
  • 赤 → 新鮮な肉、トマト
  • 黄色 → 卵、チーズ

逆に、青みがかった色は「腐敗」や「冷たさ」を連想させ、食欲を減退させます。

色温度の調整方法

Camera Raw / Lightroom の場合

  • 色温度スライダーを暖色方向(右)へ
  • 目安:+500〜+1500K程度

Photoshop の場合

  • トーンカーブでブルーチャンネルを下げる
  • または「フォトフィルター」で暖色系を適用
やりすぎに注意

暖色に寄せすぎると、不自然なオレンジ色になります。白い皿やテーブルクロスを基準に、白が自然に見える範囲で調整しましょう。

彩度と鮮やかさ

全体の彩度調整

彩度を上げると食材の色が鮮やかになり、新鮮な印象を与えます。

推奨設定

  • 彩度(Saturation):+10〜+25
  • 自然な彩度(Vibrance):+15〜+30

「自然な彩度」は肌色などの中間色への影響が少なく、食材の色だけを効果的に強調できます。

色別の調整

特定の色だけを調整すると、より効果的です。

調整方向 効果
彩度↑ 肉、トマト、苺が鮮やかに
オレンジ 彩度↑ 明度↑ パン、揚げ物の焼き色強調
黄色 彩度↑ 卵、チーズ、レモン
彩度↑ 色相調整 野菜を新鮮に(黄色寄りは避ける)
レタッチャー
レタッチャー

緑の野菜は特に注意が必要です。黄色に寄ると「傷んでいる」印象になるので、青緑寄りの鮮やかな緑を目指しましょう。

ツヤとテリの表現

ツヤが重要な理由

料理の「ツヤ」や「テリ」は、ジューシーさ・新鮮さ・美味しさを視覚的に伝えます。

  • ステーキの肉汁のツヤ
  • 照り焼きのタレのテリ
  • サラダの野菜についた水滴
  • フルーツの瑞々しさ

ツヤを強調するテクニック

1. ハイライトの強調

  • トーンカーブでハイライト部分を持ち上げる
  • 白レベルを少し上げる

2. コントラストの調整

  • 明暗差をつけてツヤを際立たせる
  • ただし影が潰れないよう注意

3. 部分的なドッジ

  • ツヤの部分だけを覆い焼きで明るく
  • 不透明度5〜10%で少しずつ

ツヤを足すレタッチ

撮影時にツヤが足りなかった場合、レタッチで追加することも可能です。

  1. 新規レイヤーを作成
  2. 白いブラシでツヤを入れたい部分を塗る
  3. ぼかし(ガウス)を適用
  4. 描画モードを「スクリーン」または「オーバーレイ」に
  5. 不透明度を調整

シズル感の演出

シズル感とは

「シズル感」とは、食品の五感に訴える臨場感のことです。

  • 湯気が立ち上る熱々感
  • 肉汁が滴るジューシーさ
  • 揚げたてのサクサク感
  • 冷たいドリンクの水滴

レタッチでのシズル表現

湯気の追加

  • 別撮りの湯気素材を合成
  • またはブラシで湯気を描く
  • 描画モード「スクリーン」で合成

水滴の追加

  • 水滴ブラシで冷たさを演出
  • 光の反射も忘れずに
合成の注意点

湯気や水滴の合成は、不自然になりやすいので注意が必要です。光の方向や背景との馴染みを確認しましょう。

背景と食器の処理

背景の色補正

料理を引き立てるために、背景の処理も重要です。

  • 明るい背景:清潔感、カフェ風
  • 暗い背景:高級感、レストラン風
  • 木目背景:ナチュラル、温かみ

食器の調整

  • 白い皿は純白に近づける(黄ばみを取る)
  • 汚れや指紋は除去
  • 不要な反射は抑える

テーブルのゴミ取り

撮影時に気づかなかった細かいゴミやホコリは、スポット修復ブラシで除去します。

用途別のレタッチ方針

飲食店メニュー

目的:注文してもらう

  • 実物とかけ離れすぎない範囲で魅力的に
  • 量感が伝わるように
  • 店内照明での見え方を考慮(印刷はやや明るめに)

ECサイト・通販

目的:購入してもらう

  • 商品の詳細が分かるクリアな仕上げ
  • 複数カットの色味を統一
  • 白背景の場合は背景を純白に

SNS・広告

目的:目を引く、シェアされる

  • インパクト重視でやや派手めに
  • トレンドの色調を意識
  • スマートフォンでの見え方を確認
用途 彩度 コントラスト 加工の程度
メニュー 控えめ 標準 自然に
EC 標準 やや高め クリアに
SNS やや高め 高め 印象的に

実際のワークフロー

基本的な手順

  1. RAW現像(RAWの場合)

    • 露出、色温度の基本調整
    • レンズ補正
  2. 全体の色調整

    • 色温度を暖色寄りに
    • 彩度・コントラストの調整
  3. 部分補正

    • 食材ごとに色の微調整
    • ツヤの強調
  4. レタッチ

    • ゴミ・汚れの除去
    • 不要な反射の除去
  5. 最終調整

    • 全体のバランス確認
    • シャープネスの適用

よくある修正ポイント

  • 肉の色が悪い → 赤〜オレンジの彩度を上げる
  • 野菜がくすんでいる → 緑の彩度を上げ、黄色味を抑える
  • 全体的に暗い → 露出を上げ、シャドウを持ち上げる
  • ツヤがない → ハイライトを強調、部分的にドッジ

よくある質問

Q. 実物と違いすぎるとクレームになりませんか?

飲食店の場合、過度な加工は「写真と違う」というクレームにつながる可能性があります。「実物の良さを引き出す」程度にとどめましょう。

Q. RAW撮影していない場合は?

JPEGでも基本的な調整は可能です。ただし、色温度の大幅な変更や暗部の持ち上げは画質劣化につながるため、限界があります。

Q. スマートフォン撮影の写真でも効果はありますか?

あります。特に色温度と彩度の調整は効果的です。ただし、元の画質が低い場合は過度な加工は避けましょう。

まとめ

食品写真のレタッチは、「美味しそう」という印象を作り出す作業です。

  • 色温度:暖色系で食欲をそそる
  • 彩度:食材の色を鮮やかに
  • ツヤ・テリ:ジューシーさ、新鮮さを表現
  • シズル感:五感に訴える臨場感
  • 用途に応じた調整:メニュー、EC、SNSで方針を変える

適切なレタッチで、料理の魅力を最大限に引き出しましょう。

写真の仕上がりを劇的に変える

Tags

食品撮影 料理写真 色補正 商品撮影

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