撮影から帰ってきて、PCに取り込んだ写真は800枚超。
クライアントへの納品は30枚。
どれを選べばいいのかわからず、何時間も悩んでいませんか?
写真選定(カリング)は、レタッチと同じくらい重要なスキルです。
この記事では、効率的に「正しい写真」を選ぶための基準とテクニックを解説します。
選定の前に決めるべきこと
納品枚数を明確にする
選定を始める前に、ゴールを決めます。
例:
- ウェディング: 300〜500枚
- ポートレート撮影会: 20〜50枚
- 商品撮影: 商品数 × 3〜5カット
- イベント撮影: 撮影枚数の10〜15%
納品枚数が決まっていないと、選定基準が曖昧になり、時間が無限にかかります。
選定基準を言語化する
「なんとなく良い」で選んでいませんか?
選ぶ前に「何を重視するか」を明確にすることで、判断が速くなります。
基準の例:
- 表情優先(ポートレート)
- 商品の見え方優先(商品撮影)
- 決定的瞬間優先(イベント)
- 光の美しさ優先(風景)
第一選定:技術的NGを弾く
ピンボケ・ブレ
最優先で弾くべき致命的欠陥です。
判断基準:
- メインの被写体(顔、商品など)がシャープか
- 手ブレ・被写体ブレで像が流れていないか
注意: 意図的なブレ(流し撮りなど)は除く
露出の失敗
白飛び・黒つぶれが激しい写真は、レタッチでも復旧が困難。
判断基準:
- ハイライトが完全に飛んでいないか
- シャドウが完全につぶれていないか
- RAWでも±2段程度の救済が限界
少しの白飛びは許容していいんですか?
ケースバイケースです。太陽や照明の光源が飛んでいるのは自然なこと。問題なのは、被写体の重要な部分(肌、商品)が飛んでいる場合。そこは復旧できません。
目つぶり・変な表情
ポートレートでは、目が開いているかどうかが最低条件。
AIカリングツールの活用:
Aftershootなどのツールは、目つぶり・半目を自動検出します。大量の写真を扱う場合は積極的に使いましょう。
第二選定:構図と瞬間
構図の評価
技術的にOKな写真から、構図が良いものを選びます。
チェックポイント:
- 被写体が適切な位置にあるか
- 余計なものがフレームインしていないか
- 背景が整理されているか
- 水平・垂直が取れているか(傾きは補正可能だが、構図が変わる)
「決定的瞬間」の評価
同じ構図で複数枚撮った場合、「瞬間」で差がつきます。
ポートレートの場合:
- 表情が自然か
- 目に光が入っているか
- 髪の流れが美しいか
イベントの場合:
- 動きのピークを捉えているか
- 感情が伝わる瞬間か
- ストーリーを語れる1枚か
構図は最高だけど表情がイマイチ、瞬間は最高だけどピントが甘い——このような「惜しい」写真は、キープしておいて後から見直すのがおすすめ。完璧な写真が不足している場合の保険になります。
第三選定:多様性とストーリー
同じようなカットを減らす
10枚連写して、全部ほぼ同じ。これを全部残してはいけません。
判断基準:
- 連写の中から「ベスト1枚」を選ぶ
- 同じ構図・同じポーズは1つだけ
- 違いが微妙なら、1枚に絞る
バリエーションを確保する
アルバムや納品物として見たとき、変化が必要です。
チェックすべきバリエーション:
- 構図(寄り・引き、縦・横)
- アングル(正面・斜め・後ろ姿)
- 表情・ポーズ
- 場所・背景
よくある失敗は「似たような写真ばかり選ぶ」こと。1枚1枚は良くても、並べると単調になります。アルバム全体を想像しながら選ぶことが大切です。
判断に迷ったときの基準
「3秒ルール」
写真を見て3秒で判断がつかなければ、保留して次へ。
理由:
- 迷う写真は「微妙な写真」であることが多い
- 1枚に時間をかけすぎると全体が見えなくなる
- 後から見直すと意外とすんなり判断できる
「比較法」
似たカットで迷ったら、並べて比較。
Lightroomの場合:
- 「N」キーで比較モード
- 2枚を並べて違いを確認
- 優れている方を残す
「ストーリー優先」
技術的には劣るが、感情的に響く写真は残す価値あり。
例:
- 少しブレているが、子供の笑顔が最高
- 露出が厳しいが、決定的瞬間を捉えている
- 構図がイマイチだが、感情が溢れている
完璧な技術の無表情より、少し甘いが感情豊かな写真の方が、見る人の心に残ります。ただし、これは「救済不可能な欠陥」がないことが前提。ピンボケでは感情も伝わりません。
選定の効率化テクニック
キーボードショートカットを使う
マウスでポチポチしていては時間がかかります。
Lightroom推奨設定:
- P: ピック(採用)
- X: リジェクト(却下)
- U: フラグ解除
- 1〜5: レーティング
- →/←: 次/前の写真
2パス方式
1回で完璧に選ぼうとしない。
1パス目(高速):
- 明らかなNGを弾く
- 迷ったら残す
- 1枚1秒を目安に
2パス目(丁寧):
- 残った写真から最終選定
- 類似カットを比較して絞る
- 全体のバランスを確認
時間を区切る
「終わるまで続ける」はNG。
例:
- 1時間で一次選定を終える
- 休憩を挟んでから二次選定
- 翌日に最終チェック
時間を空けると、新鮮な目で見られます。
よくある失敗と対策
失敗①: 全部良く見えて選べない
原因: 基準が曖昧
対策: 選定前に「何を重視するか」を決める
失敗②: 気に入った写真ばかり選んで単調に
原因: 全体を見ていない
対策: 選定後に「並び」を確認、バリエーションチェック
失敗③: 技術的に完璧だが面白くない選定
原因: 技術偏重
対策: 「感情」「ストーリー」の基準も入れる
失敗④: 選定に時間がかかりすぎる
原因: 1枚ずつ完璧を求めている
対策: 2パス方式、時間制限、3秒ルール
まとめ:選定の優先順位
| 優先度 | 判断基準 | 具体的なチェック |
|---|---|---|
| 1 | 技術的NG排除 | ピンボケ、ブレ、致命的露出ミス |
| 2 | 構図・瞬間 | 被写体の位置、表情、決定的瞬間 |
| 3 | 多様性 | バリエーション、重複排除 |
| 4 | 感情・ストーリー | 見る人の心に響くか |
この記事のポイント:
- 選定前に「納品枚数」と「基準」を決める
- 技術的NGを先に弾き、構図・瞬間で絞る
- 似たカットは「ベスト1枚」に絞る
- アルバム全体のバリエーションを意識
- 迷ったら「3秒ルール」で保留
- 技術より感情が優先される場合もある
写真選定は「捨てる技術」です。撮影した全ての写真に価値があるわけではありません。「本当に良い写真」だけを残す勇気を持つことで、最終成果物のクオリティが上がります。