長年、Photoshopでの仕上がりに満足しながらも「もう少し解像度が欲しい」というときに、わざわざTopaz Gigapixelを別途起動していた人は多いはずです。
書き出し→Topazで処理→Photoshopに戻す——この往復作業が、Photoshop 27.4でついに不要になりました。
2026年2月リリースの最新アップデートで、Topaz LabsのAI超解像エンジンがGenerative Upscale機能に直接組み込まれました。GigapixelとBloomの2モデルが追加され、Photoshop内で最大56MPまでのAIアップスケールが完結します。
このアップデートが実務にどう影響するか、2つのモデルの使い分けからクレジット消費の仕組みまで詳しく解説します。
Photoshop 27.4の新機能 — Generative UpscaleにTopazモデル追加
統合の背景
Topaz Labsは長年、写真家・映像制作者向けのAI処理ツールを開発してきた独立系のソフトウェアメーカーです。Gigapixel AIはその代表的な製品で、AIによるアップスケールの精度において業界標準とも評価されてきました。
AdobeはこのTopaz Labsと提携し、GigapixelのAIモデルをPhotoshopのGenerative Upscaleに組み込みました。ユーザー側の体験として重要なのは、別途Topazのサブスクリプションを契約する必要がないという点です。
アクセス方法
操作は従来のGenerative Upscaleとほぼ同じ流れです。
Photoshopで対象の画像を開きます。PSD、TIFF、JPEGなどに対応しています。
メニューバーから「Image(イメージ)」→「Generative Upscale(ジェネレーティブアップスケール)」を選択します。
ダイアログ内でモデルを選びます。「Gigapixel」または「Bloom」から用途に合わせて選択します。
アップスケール後の解像度を指定します。最大56MPまで選択できます。
「Generate」ボタンをクリックすると処理が始まります。完了後、アップスケール済みの画像が新しいレイヤーとして追加されます。
従来のGenerative Upscaleと何が変わったんですか?
従来のGenerative UpscaleはAdobeのFireflyモデルのみでした。今回からTopazのGigapixelとBloomという2つのサードパーティモデルが追加されています。処理エンジンが違うので、仕上がりの性質もかなり異なります。
Gigapixel vs Bloom — 2つのモデルの使い分け
Gigapixel:原画に忠実な超解像
Gigapixelモデルは、Topazの看板製品として長年培ってきたAI超解像技術がベースです。
「あったはずのディテールを復元する」というアプローチで、元の写真に存在した質感・テクスチャをAIが推測して再現します。フォトリアリスティックな仕上がりが特徴で、写真の自然な見た目を保ちながら解像度を上げたい場合に向いています。
Gigapixelが得意なシーン:
- 風景写真の大判プリント出力前の解像度アップ
- 低解像度で撮影されたアーカイブ写真の復元
- クロップ後のトリミング画像の解像度回復
- 納品仕様に解像度が足りない写真の救済
Topaz単体版のGigapixelと処理結果は同じですか?
モデル自体はTopaz Labsが提供したものですが、Photoshop統合版と単体版で完全に同一の出力が保証されるわけではありません。処理パラメータの細かい調整幅は単体版の方が広いため、追い込んだ設定をしたい場合は単体版が有利です。日常的なアップスケールならPhotoshop統合版で十分対応できます。
Bloom:クリエイティブなディテール追加
Bloomモデルは、Gigapixelとは異なるアプローチを取ります。
原画のディテールを忠実に復元するのではなく、AIがクリエイティブなディテールを新たに生成・追加します。結果として、元の写真を超えた表現が可能になりますが、写実性よりも「絵としての完成度」を高めるイメージです。
Bloomが得意なシーン:
- ポートレートの肌テクスチャを印象的に仕上げたい
- アート系・クリエイティブ系の作品制作
- SNSやポスターなど、インパクト重視の用途
- オリジナルに縛られず質感を強調したい場面
| 比較項目 | Gigapixel | Bloom |
|---|---|---|
| アプローチ | 原画のディテールを復元 | クリエイティブなディテールを生成 |
| 仕上がりの性質 | フォトリアリスティック | アーティスティック |
| 最適な用途 | 印刷・アーカイブ・救済 | SNS・アート・ポスター |
| 元画像の忠実度 | 高い | やや低い(生成要素あり) |
| 最大出力 | 56MP | 56MP |
迷ったときの基準は「元の写真に忠実でいたいか、それとも表現を強めたいか」です。商業写真・報道・記録写真にはGigapixel、ビジュアル訴求力を高めたいクリエイティブ用途にはBloomが向いています。
実務でのワークフロー — いつ使うべきか
解像度が足りないときの「救済手段」として
アップスケールが最も活躍するのは、解像度不足を後処理で補う場面です。
たとえば以下のようなケースが典型的です。
- クライアントから「A2サイズ印刷したい」と言われたが、元データが2000万画素しかない
- 展示パネル用に高解像度が必要だが、追加撮影ができない
- 大幅にクロップした結果、解像度が不足した
従来はTopaz Gigapixelを別途起動して書き出す必要がありましたが、27.4以降はPhotoshop内で完結します。作業のコンテキスト切り替えがなくなるだけで、体感の効率は大きく改善します。
最大56MPって、実際どのくらいのサイズ感ですか?
56MPは約8,000×7,000ピクセル前後の解像度です。A2サイズを300dpiで印刷するには約7,000×9,900ピクセルが必要なので、A2印刷にほぼ対応できる解像度です。2000万画素のカメラで撮った写真を56MPまで引き上げれば、大判印刷の多くのケースに対応できます。
Generative Fill・Expandとの組み合わせ
27.4のもうひとつの改善点として、Generative FillとGenerative Expandの「Generate Similar(似た内容を生成)」機能に、アップグレードされたFirefly Fill & Expandモデルが適用されています。
実務では以下の組み合わせが効果的です。
- Generative Expandで画像の余白を拡張
- 必要に応じてGenerative Fillで細部を調整
- 全体の解像度が足りなければGenerative Upscale(Gigapixel)で引き上げる
この一連の流れがPhotoshop内で完結するようになったのが、27.4最大の実務上のメリットです。
- Photoshop内でAIアップスケールが完結(ツール切り替え不要)
- Topazの高品質AIエンジンが利用できる
- 最大56MPの大解像度出力
- GigapixelとBloomで用途別に選べる
- 別途Topazサブスク不要
- Generative Fill/Expandも同時に改善
- Adobeジェネレーティブクレジットを消費する
- Topaz単体版より設定の細かい調整が限定的
- オフライン環境では利用不可(クラウド処理)
- 56MPを超える出力は非対応
クレジット消費と従来のTopaz単体版との比較
Adobeジェネレーティブクレジットの仕組み
Topaz統合モデルを含むGenerative Upscaleの利用には、Adobeジェネレーティブクレジットが消費されます。
Adobe Creative Cloudサブスクリプションに付帯する「AI機能利用枠」です。Generative Fill、Generative Expand、Generative Upscaleなどの生成AI機能を使うたびに消費されます。プランによって月あたりの付与クレジット数が異なります。
| プラン | 月あたりクレジット |
|---|---|
| Photography(20GB) | 25クレジット |
| Photography(1TB) | 25クレジット |
| Creative Cloud コンプリート | 1,000クレジット |
| 単品プラン(Photoshop) | 25クレジット |
月25クレジットって少なくないですか?アップスケールを頻繁に使う場合は足りなさそうで…
正直なところ、頻繁にアップスケールを使う方にはクレジット不足が課題になり得ます。追加クレジットは$4.99/100クレジットで購入可能です。仕事で毎日アップスケールを行う場合は、Topaz単体版との費用対効果を比較した方が良いケースもあります。
Topaz単体版との比較
| 比較項目 | Photoshop統合版 | Topaz Gigapixel単体版 |
|---|---|---|
| 追加コスト | ジェネレーティブクレジット | $99/年(または$199買い切り) |
| 操作性 | Photoshop内で完結 | 別アプリ起動が必要 |
| 設定の細かさ | 限定的 | 多様なパラメータ調整可 |
| 最大出力 | 56MP | 制限なし(入力の6倍まで) |
| オフライン処理 | 不可 | 可 |
| 向いている用途 | 日常的なアップスケール | 大量処理・追い込んだ設定 |
結論として、すでにCreative Cloudコンプリートプランを使っているユーザーにとっては実質追加コストなしで利用できる非常に便利な機能です。一方、Photographyプランでクレジットが少ない場合や、業務で大量処理が必要な場合は、Topaz単体版の継続利用も選択肢として残ります。
そのほかのバグ修正(27.4)
27.4では実用上重要なバグ修正も含まれています。
- グラデーションツールのレイヤーマスクへの適用不具合が修正。マスクにグラデーションを描く作業が正常に動作するようになりました
- CMYKドキュメントでの「人物を選択」ツールの動作不具合が修正
- フローティングタブの挙動の安定性改善
特にグラデーションマスクの修正は、コンポジット作業やポートレートのマスキングを頻繁に行う方には歓迎されるはずです。
まとめ
Photoshop 27.4のTopaz統合は、ワークフロー効率化の観点から見ると非常に意味のあるアップデートです。
- Topaz GigapixelとBloomがGenerative Upscaleに統合。別アプリ不要で最大56MPのAI超解像が可能に
- Gigapixelは原画忠実な高解像化、Bloomはクリエイティブなディテール追加——用途で使い分ける
- 利用にはAdobeジェネレーティブクレジットを消費。コンプリートプランなら1,000クレジット/月で実用十分
- Photographyプランなど月25クレジットのみの場合は、頻繁な利用には追加購入または単体版の検討が必要
- Generative Fill & Expandも同時改善。拡張→調整→アップスケールの一連の流れがPhotoshop内で完結する
ひとつのアプリで完結できる体験は、実際に使い始めると戻れなくなります。まずは次の「解像度が足りない」という場面でGigapixelモデルを試してみてください。
※本記事はレタッチの教科書 by Retouch Ink が独自に調査・執筆したものです。
よくある質問
不要です。Photoshop 27.4以降、GigapixelとBloomモデルはPhotoshop(Adobe Creative Cloud)のサブスクリプションに含まれています。ただし、利用するたびにAdobeのジェネレーティブクレジットが消費されます。クレジットはプランによって月あたりの付与量が異なります。
基本的にはGigapixelを選べば間違いありません。原画のディテールを忠実に復元するフォトリアリスティックな仕上がりで、印刷・商業用途・記録写真など幅広いケースに対応します。BloomはクリエイティブなディテールをAIが生成・追加するモデルで、アート系やSNS用のビジュアル制作など、表現を積極的に加えたい場面向けです。
Generative Upscaleは元画像より大きい解像度に引き上げる機能のため、すでに56MP以上の画像には効果がありません。また元画像の解像度によって実際に選べるアップスケール倍率も変わります。Topaz単体版は「入力の最大6倍」まで対応しており、非常に低解像度の素材を大きく引き上げたい場合は単体版が有利なケースもあります。
Generative Upscale(Topaz統合モデルを含む)はクラウド処理のため、インターネット接続が必要です。オフライン環境での利用には対応していません。オフラインで大量処理を行いたい場合は、Topaz Gigapixel単体版(ローカル処理)の利用を検討してください。詳しくはRetouch Inkの関連記事もご参照ください。
一部の環境で、グラデーションツールをレイヤーマスクに直接描画する操作が正常に機能しない不具合が発生していました。特にコンポジット合成やポートレートのソフトマスク作成時に影響していた問題で、27.4で修正されています。CMYKドキュメントでの「人物を選択」ツールの不具合も同時に修正されました。