100枚の写真に同じ処理を施す。毎回同じサイズにリサイズして保存する。——こうした繰り返し作業に、どれだけの時間を費やしていますか?
Photoshopの「アクション」機能を使えば、数十回の操作をワンクリックで実行できます。プロのレタッチャーが必ず使いこなしている、最強の時短機能です。

アクションとは何か
アクションって、具体的に何ができる機能なんですか?
簡単に言うと「操作の録画機能」です。自分がPhotoshopで行った操作を記録して、いつでも再生できる。同じ作業を二度と手動でやる必要がなくなります。
アクションの仕組み
アクションは、Photoshop上で行った操作を「ステップ」として記録します。
- 記録開始ボタンを押す
- 実際に操作を行う(リサイズ、フィルター適用、保存など)
- 記録停止ボタンを押す
- 次からはワンクリックで同じ操作が再現される
録画した操作は「アクションパネル」に保存され、いつでも呼び出せます。
アクションでできること
| 操作の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 画像調整 | 明るさ・コントラスト、色相・彩度、トーンカーブ |
| サイズ変更 | リサイズ、トリミング、カンバスサイズ変更 |
| フィルター | シャープ、ぼかし、ノイズ除去 |
| レイヤー操作 | レイヤー作成、複製、ブレンドモード変更 |
| ファイル操作 | 別名保存、書き出し、形式変換 |
アクションは「決まった操作」を記録するもの。画像ごとに判断が必要な作業(肌のレタッチ、切り抜きなど)は自動化できません。「全画像に同じ処理を施す」場面で真価を発揮します。
アクションの作り方
実際にアクションを作成してみましょう。ここでは「Web用に画像をリサイズして保存する」アクションを例に解説します。
Step 1: アクションパネルを開く
メニュー → ウィンドウ → アクション(またはAlt+F9 / Option+F9)
アクションパネルが表示されます。デフォルトでいくつかのアクションがプリセットされていますが、自分用のアクションを作ることが重要です。
Step 2: 新規セットを作成
アクションパネル下部のフォルダアイコンをクリックして、新規セット(フォルダ)を作成します。
- セット名:「レタッチ用」「Web書き出し」など、わかりやすい名前をつける
- 複数のアクションを整理するためのグループ
Step 3: 新規アクションを作成
フォルダアイコンの隣にある「+」ボタンをクリック。
| 設定項目 | 説明 |
|---|---|
| アクション名 | 「Web用リサイズ_1200px」など具体的に |
| セット | 作成したセットを選択 |
| ファンクションキー | F2〜F12を割り当て可能(任意) |
| カラー | パネル上での識別用(任意) |
「記録」をクリックすると、この瞬間から全ての操作が記録されます。
Step 4: 操作を実行する
記録中に、実際の操作を行います。
- イメージ → 画像解像度 → 幅を1200pxに設定
- フィルター → シャープ → アンシャープマスク → 適用
- ファイル → 書き出し → Web用に保存
操作するたびに、アクションパネルにステップが追加されていきます。
Step 5: 記録を停止
アクションパネル下部の「■」(停止)ボタンをクリック。
これでアクションが完成です。次からは、このアクションを選択して「▶」(再生)ボタンを押すだけで、同じ操作が自動実行されます。

プロが使うアクションの実例
レタッチの現場では、どんなアクションが使われているのでしょうか。実際に業務で活用されているアクションを紹介します。
1. 周波数分離セットアップ
肌レタッチの定番テクニック「周波数分離」の準備は、毎回同じ手順です。
アクションの内容:
- 背景レイヤーを2回複製
- 下のレイヤーに「ぼかし(ガウス)」適用
- 上のレイヤーに「画像操作」で差分を作成
- ブレンドモードを「リニアライト」に変更
- グループにまとめる
手動でやると2分かかる作業が、アクションなら3秒です。
2. 覆い焼き・焼き込みレイヤー作成
ドッジ&バーンの準備も定番のアクション化対象。
アクションの内容:
- 新規レイヤーを作成
- 50%グレーで塗りつぶし
- ブレンドモードを「ソフトライト」に変更
- レイヤー名を「Dodge & Burn」に変更
3. 色確認用レイヤー
レタッチ中に色被りや明暗のバランスを確認するためのレイヤー。
アクションの内容:
- 新規調整レイヤー「白黒」を作成(モノクロで明暗確認)
- 新規調整レイヤー「色相・彩度」で彩度を+100(色被り確認)
- グループにまとめて非表示に
確認したいときだけグループを表示すれば、すぐにチェックできます。
派手な加工を一発で適用するアクションより、「地味だけど毎回やる作業」をアクション化する方が実用的です。周波数分離やドッジ&バーンのセットアップは、その典型例。
バッチ処理:大量の画像を一括処理
アクションの真価が発揮されるのが「バッチ処理」との組み合わせです。100枚の画像に同じアクションを自動適用できます。
バッチ処理の手順
ファイル → 自動処理 → バッチ
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| セット | 使用するアクションのセット |
| アクション | 実行するアクション |
| ソース | フォルダー(処理する画像が入ったフォルダを指定) |
| 実行後 | フォルダー(保存先を指定)または「保存して閉じる」 |
「OK」をクリックすると、指定フォルダ内の全画像に対してアクションが自動実行されます。
バッチ処理の注意点
アクション内に「ファイルを開く」「保存」の操作が含まれている場合、バッチ設定で「"開く"コマンドを無視」「"別名で保存"コマンドを無視」にチェックを入れないと、意図通りに動作しません。
実践例:撮影データの一括処理
撮影後のルーティン作業をバッチ化した例:
- RAW現像後のTIFFファイルをフォルダに保存
- アクションを作成
- 長辺2000pxにリサイズ
- アンシャープマスク適用
- JPEGで別フォルダに保存
- バッチ処理で一括実行
200枚の画像でも、放置しておけば自動で完了します。

ファンクションキーで瞬時に呼び出す
よく使うアクションは、ファンクションキー(F1〜F12)に割り当てておくと便利です。
設定方法
- アクションパネルでアクションをダブルクリック
- 「ファンクションキー」で希望のキーを選択
- Shift、Ctrl/Cmdとの組み合わせも可能
おすすめの割り当て例
| キー | アクション |
|---|---|
| F2 | 周波数分離セットアップ |
| F3 | ドッジ&バーンレイヤー作成 |
| F4 | 色確認レイヤー作成 |
| F5 | Web用書き出し |
| Shift+F2 | レイヤーを統合して複製 |
キーボードに手を置いたまま、マウスを動かさずにアクションを実行できる。これだけで作業スピードが全然違います。
アクションのエクスポートと共有
作成したアクションは、他のPCやチームメンバーと共有できます。
エクスポート方法
- アクションパネルで、エクスポートしたいセットを選択
- パネルメニュー(≡)から「アクションを保存」
- .atn形式で保存される
インポート方法
- アクションパネルメニューから「アクションを読み込み」
- .atnファイルを選択
- アクションパネルにセットが追加される
無料アクションの入手先
ネット上には多くの無料アクションが公開されています。
- Adobe公式 — Photoshopに標準搭載のアクション
- Photoshop関連ブログ — レタッチ用、写真加工用など多数
- 海外サイト — 「Free Photoshop Actions」で検索
ダウンロードしたアクションをそのまま使うより、一度中身を確認して、自分のワークフローに合わせてカスタマイズすることをおすすめします。不要なステップを削除したり、設定値を調整したり。
アクションを編集・カスタマイズする
一度作成したアクションは、後から編集できます。
ステップの削除
不要なステップをアクションパネルでドラッグ → ゴミ箱アイコンにドロップ
ステップの追加
- 追加したい位置の直前のステップを選択
- 記録ボタンを押して操作を実行
- 停止ボタンを押す
ダイアログ表示の設定
ステップの左側にあるアイコンをクリックすると、そのステップ実行時にダイアログを表示できます。
例:リサイズアクションで、毎回サイズを手入力したい場合に便利。
よくあるトラブルと解決法
アクションが途中で止まる
原因: 記録時と再生時で、レイヤー構造やファイル形式が異なる
解決策: アクションの前提条件を明確にする。「背景レイヤーが1枚の状態から開始」など。
保存先がおかしい
原因: アクション記録時の保存パスがハードコードされている
解決策: バッチ処理の「"別名で保存"コマンドを無視」にチェック
色がおかしくなる
原因: カラーモードの違い(RGB/CMYK)
解決策: アクションの最初に「モード → RGB」を追加
まとめ
Photoshopのアクションは、繰り返し作業を自動化する最強の機能です。
- アクションとは — 操作を記録して、ワンクリックで再生できる機能
- 作り方 — 記録開始 → 操作実行 → 記録停止
- バッチ処理 — 大量の画像に同じアクションを一括適用
- ファンクションキー — よく使うアクションを瞬時に呼び出し
「同じ作業を二度やらない」——これがプロの鉄則です。
最初は「アクション作る時間がもったいない」と思うかもしれません。でも、その作業を今後何百回もやることを考えれば、5分かけてアクションを作る価値は十分にあります。
まずは簡単なリサイズアクションから始めて、徐々に自分だけのアクションライブラリを構築していきましょう。