「Photoshopでなんでも直せるんでしょ?」「レタッチすれば、どんな写真も綺麗になるんでしょ?」
そんなふうに思っている方も少なくありません。
レタッチしてほしい写真が1枚あります。完成イメージはこんな感じで、広告みたいに仕上げてほしいんです!
これはiPhoneで撮影された写真ですか?もしそうなら、正直に言うと広告レベルのクオリティにはなりません。スマホや一般的なカメラの写真は、そもそも"レタッチに耐えられる情報量"が足りないんです。
もちろん、自然に明るく見せたり、肌を整えたりといった調整はできます。でも、プロの広告のようなライティングや立体感は撮影段階で作られているので、レタッチだけでは再現できない部分なんです。
実際の現場でプロのレタッチャーが感じているのは――
レタッチは"魔法"じゃない。
写真が綺麗なのは、元の撮影クオリティが高いからこそ。
なぜ「良い素材」が重要なのか?
撮影の段階ですでに8割が決まっている
以下のような要素が揃っていなければ、レタッチでどう頑張っても不自然な仕上がりになってしまいます。
- 美しい光のコントロール(自然光 or ライティング)
- 高解像度で階調豊かな画像
- 肌の質感を潰さない柔らかい照明
- 表情やポーズの完成度
撮影の技術と準備がしっかりしていることが、プロ品質のベースです。
高級機材は"ただの贅沢"じゃない
レタッチは、元画像の画質や階調(明るさの細かい段階)が非常に重要です。素材にノイズやブレがあると、加工すればするほど不自然さが際立ってしまいます。
そのため、プロの現場では最初から「レタッチに耐えられるクオリティ」の素材を撮影するのが常識です。
例えば:
- 100万円を超えるLeica SL3やSONY α1などのフラッグシップ機
- 解像度・階調・ダイナミックレンジに優れた中判カメラ(Phase Oneなど)
- 単体で100万円以上するような高級レンズ
こういった機材は単なる贅沢ではありません。高額な理由は、後工程であるレタッチや印刷に耐えられる「情報量」を記録できるからです。
なぜ"普通のカメラ"やスマホだと厳しいのか?
情報量ってそんなに違うものなんですか?スマホの写真も最近すごく綺麗に見えますけど…?
見た目は綺麗に見えても、実際のデータ量は全然違います。センサーサイズ(光を受け取る部分)が数倍から十数倍も差があるんです。その分、階調や光の情報が圧倒的に少ないんですよ。
センサーサイズの違いを比較
| 機材 | センサーサイズ | 特徴 |
|---|---|---|
| スマートフォン(iPhone) | 約1/1.28インチ | AI補正前提。編集耐性は低め |
| APS-Cカメラ | 約23.6mm × 15.6mm | 初心者〜中級向け。階調や情報量はそこそこ |
| フルフレームカメラ | 36mm × 24mm | プロ仕様のスタンダード。編集耐性◎ |
センサーサイズが小さいほど光を取り込む量が少なく、ディテールや階調表現に限界があります。
スマホやAPS-Cのカメラで撮影した写真は、元の情報が少ないため「編集耐性」が低く、色補正や肌レタッチを施すとすぐに不自然になってしまいます。
どれだけPhotoshopの技術があっても、元が悪ければ「美しく仕上げる」のは不可能です。
まとめ|レタッチは「魔法」ではない、職人技の仕上げ
綺麗な写真の裏側には、
- プロのカメラマンのライティング・構図
- 高解像度の機材と光学性能
- 現場での丁寧なディレクション
- そして、その素材を活かすレタッチ技術
が組み合わさった「チームプレイの結果」があります。
魔法のようにすべてを変えるのがレタッチではありません。すでに高品質な素材を、さらに整えて美しく見せるための技術です。
なるほど〜!ただ加工してるわけじゃなくて、撮影からレタッチまで全部がつながってるんですね。
そうなんです。魔法のようにすべてを変えるのがレタッチではなく、すでに良い素材を、さらに美しく見せるための職人技なんです。
撮影段階から手を抜かないこと。それが「良いレタッチ」への第一歩です。