「データ上では鮮やかだったのに、印刷したらなんだか暗い」——レタッチや印刷の現場でよく耳にする悩みです。
この原因の多くは、RGBとCMYKというカラーモードの違いにあります。両者の違いを理解すれば、印刷での色のトラブルを未然に防ぐことができます。
RGBとCMYKとは
RGBとCMYKって、何が違うんですか?
簡単に言うと、RGBは「光の色」、CMYKは「インクの色」です。画面で見る色と、紙に印刷する色は、そもそも仕組みが違うんです。
RGBとは
RGBは「Red(赤)・Green(緑)・Blue(青)」の頭文字で、光の三原色を使った色の表現方法です。
パソコンのモニター、スマートフォン、テレビなど、光を発するディスプレイで使われています。色を混ぜるほど明るくなり、すべて混ぜると白になります(加法混色)。
CMYKとは
CMYKは「Cyan(シアン)・Magenta(マゼンタ)・Yellow(イエロー)・Key plate(黒)」の頭文字で、色の三原色+黒を使った色の表現方法です。
印刷物やインクジェットプリンターなど、インクや顔料を使う場面で使われています。色を混ぜるほど暗くなり、すべて混ぜると黒に近づきます(減法混色)。
比較表
| 項目 | RGB | CMYK |
|---|---|---|
| 原理 | 光の三原色(加法混色) | 色の三原色+黒(減法混色) |
| 用途 | Web、モニター、動画 | 印刷物、紙媒体 |
| 色数 | 約1,677万色 | 約100万色 |
| 混ぜると | 白くなる | 黒くなる |
なぜ印刷すると色がくすむのか
画面ではきれいな色だったのに、印刷したら暗くなってしまったんです...
それはRGBとCMYKの「色域」の違いが原因です。RGBで表現できる色の約35%は、CMYKでは再現できないんです。
色域(ガモット)の違い
人間の目に見える色のうち、CMYKはRGBの約65%しかカバーできません。特に以下の色は、CMYKで再現しにくい傾向があります。
- 鮮やかな青・紫 — くすんで見える
- 蛍光色のようなオレンジ — 彩度が落ちる
- ネオンピンク — 地味な色味になる
- 深い緑 — 濁って見える
なぜ再現できないのか
RGBは光そのもので色を表現するため、非常に鮮やかな色を出せます。一方CMYKは紙にインクを載せて「光を反射」させることで色を表現します。
この仕組みの違いにより、モニターで見た鮮やかな発色を紙の上で完全に再現することは、物理的に不可能なのです。
RGBからCMYKへの変換は不可逆です。一度CMYKに変換したデータをRGBに戻しても、失われた色情報は復元できません。
用途別の正しい使い分け
Webやモニター表示 → RGB
- ホームページの画像
- SNS投稿用の写真
- YouTubeのサムネイル
- デジタルサイネージ
これらはすべてRGBで作成します。CMYKで作ると逆に色がくすんで見えてしまいます。
印刷物 → CMYK
- チラシ、ポスター
- 名刺、パンフレット
- 雑誌、書籍
- 商品パッケージ
印刷会社に入稿する場合は、CMYKで作成するのが基本です。
WebにもチラシにもPOPにも使う写真は、どうすればいいですか?
元データはRGBで保存しておき、印刷用には別途CMYKに変換したデータを用意するのがベストです。RGBが「原本」という考え方ですね。
CMYKに変換するときの注意点
変換前にプレビューを確認
Photoshopでは、実際に変換する前にCMYKでの見え方を確認できます。
メニュー → 表示 → 色の校正 または Ctrl+Y(Cmd+Y)
これにより、変換後にどの程度色が変わるかを事前に把握できます。
変換後の色調補正
CMYKに変換した後、色がくすんでしまった場合は以下の調整が有効です。
- トーンカーブでコントラストを上げる
- 彩度を少し上げる(上げすぎ注意)
- シアンを少し下げ、マゼンタを少し上げる(ピンク系の場合)
CMYKへの変換は、作業の最終段階で行いましょう。編集途中で変換すると、その後の調整で色域外の色が使えなくなります。
レタッチ依頼時のポイント
クライアントに確認すべきこと
レタッチを依頼・受注する際は、以下を必ず確認しましょう。
- 用途:Web用か印刷用か
- カラーモード:RGB納品かCMYK納品か
- カラープロファイル:sRGB、AdobeRGB、Japan Color 2001など
印刷入稿時の推奨設定
印刷会社への入稿データは、一般的に以下の設定が求められます。
| 項目 | 推奨設定 |
|---|---|
| カラーモード | CMYK |
| カラープロファイル | Japan Color 2001 Coated |
| 解像度 | 350dpi(原寸) |
| ファイル形式 | PSD、TIFF、PDF |
よくある質問
Q. RGBのまま入稿したらどうなる?
印刷会社側で自動的にCMYKに変換されます。ただし、意図しない色味になる可能性があるため、自分で変換して確認してから入稿するのがおすすめです。
Q. CMYKで作業した方が安全?
印刷物専用のデータであれば、最初からCMYKで作業するのも一つの方法です。ただし、Webにも使う可能性がある場合はRGBで作業し、最後にCMYK変換する方が汎用性が高くなります。
Q. AdobeRGBとsRGBの違いは?
AdobeRGBはsRGBより広い色域を持ちます。印刷用途が多い場合はAdobeRGBで作業し、Web用にはsRGBに変換するという使い分けも可能です。
まとめ
RGBとCMYKの違いを正しく理解することで、「印刷したら色が違う」というトラブルを防げます。
- RGB:光の三原色、Web・モニター用
- CMYK:インクの三原色+黒、印刷用
- 色がくすむ理由:CMYKの色域はRGBの約65%
- 対策:用途に合わせたカラーモードで作業し、変換は最終段階で
用途を明確にして、適切なカラーモードで作業することが、クオリティの高いレタッチの基本です。