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動画レタッチとは?カラーグレーディングからAI美肌補正まで完全解説
テクニック

動画レタッチとは?カラーグレーディングからAI美肌補正まで完全解説

4K時代、SNS動画の普及で「動画レタッチ」の需要が急増しています。静止画レタッチャーが知っておくべき動画編集の世界。カラーグレーディング、AI肌補正、オブジェクト除去まで、動画レタッチの全体像を解説します。

「動画もレタッチできるの?」

そう聞かれることが増えました。4K映像が当たり前になり、SNSでは動画コンテンツが主流に。高画質になるほど肌の質感まで映ってしまう時代、動画レタッチの需要は急速に高まっています。

この記事では、写真レタッチャーやフォトグラファーが知っておくべき「動画レタッチ」の世界を、カラーグレーディングからAI肌補正まで網羅的に解説します。

動画レタッチとは

動画レタッチとは、撮影後の映像に対して行うカラー補正、肌補正、不要物の除去などの後処理作業の総称です。

写真のレタッチと同様、撮影だけでは実現できないクオリティを後処理で引き上げる工程ですが、動画には写真とは異なる特有の課題があります。

読者
読者

写真のレタッチとは何が違うんですか?

レタッチャー
レタッチャー

最大の違いは「フレーム数」です。1秒間に24〜60フレーム。1分の動画でも1,440〜3,600枚の静止画を処理することになります。だから効率化とツール選びがとても重要なんです。

静止画レタッチとの違い

項目 静止画レタッチ 動画レタッチ
処理対象 1枚 数百〜数万フレーム
マスク 手動で精密に トラッキング必須
色の一貫性 1枚完結 全フレームで統一
主要ツール Photoshop DaVinci Resolve, Premiere Pro
マスクとトラッキングが鍵

動画では被写体が動くため、マスク(選択範囲)が自動で追従する「トラッキング」機能が不可欠です。これができないと、何千フレームも手動で調整することになってしまいます。

動画レタッチの種類

動画レタッチは大きく分けて5つのカテゴリに分類できます。

カラーコレクション(色補正)

撮影時の露出ミスやホワイトバランスのズレを修正し、自然で正確な色味に整える作業です。写真でいう「現像」に近い工程。

作業の順番は重要で、①シャドウ → ②ハイライト → ③ミッドトーン → ④色調整 の順で進めるのが基本です。

カラーグレーディング(色演出)

カラーコレクションで整えた映像に、意図的な色調・トーンを加えて雰囲気を作る作業です。

  • ホラー映画 → 暗い青みがかった色調
  • 朝焼けシーン → 温かいオレンジ
  • シネマティック → ティール&オレンジ
レタッチャー
レタッチャー

カラコレが「正しい色」を作る作業なら、グレーディングは「表現したい色」を作る作業。写真レタッチャーの色感覚がそのまま活きる領域です。

肌補正・ビューティーレタッチ

4K以上の高解像度では、肌の質感やシワ、毛穴まで鮮明に映るため、ビューティー系の動画では肌補正が欠かせません。

写真のように1枚ずつ手作業でやるのは現実的ではないため、AIや専用プラグインを活用します。

オブジェクト除去(バレ消し)

映り込んでしまった不要物、ロゴ、ワイヤー、マイクなどを消す作業。映画やCMでは「バレ消し」と呼ばれます。

背景除去・合成

グリーンバック(クロマキー)なしでも、AIが自動で人物を切り抜き、別の背景と合成できるようになりました。

おすすめツール

プロ向け

ツール 特徴 価格
DaVinci Resolve 業界標準のカラーグレーディング 無料版あり / Studio $295
Adobe Premiere Pro 汎用性が高い動画編集ソフト 月額2,728円〜
After Effects モーショングラフィックス、合成 月額2,728円〜
DaVinci Resolveは無料でも高機能

Blackmagic Design社のDaVinci Resolveは、無料版でも映画制作に使えるレベルのカラーグレーディング機能を搭載。多くのプロが「カラーだけはDaVinci」と使い分けています。

プラグイン

Beauty Box AI(Digital Anarchy):動画の肌補正に特化したプラグイン。AIベースのマスク機能で、肌を自動検出して自然に補正します。Premiere Pro、After Effects、DaVinci Resolveなどに対応。

Skinworks Foundation:きめ細かい肌の質感を残すハイレベルなレタッチフィルター。ボカした感じの「ヌルっとした肌」を避けたいプロ向け。

初心者向け

Filmora:直感的な操作で、カラー補正からビューティーフィルターまで対応。サブスク月額約1,000円〜。

PowerDirector:肌補正機能がスライダーひとつで簡単。AI搭載で初心者でも扱いやすい。

AIツールの急速な進化

動画レタッチの世界で、AIの存在感が急速に増しています。

読者
読者

動画編集でもAIってそんなに使われてるんですか?

レタッチャー
レタッチャー

業界統計によると、70%以上のスタジオが何らかのAIツールを活用しています。特にカラーグレーディングと肌補正の自動化が進んでいますね。

カラーグレーディングAI

Colourlab AI:リアルタイムパフォーマンスが従来の22倍高速化。自動ホワイトバランス、AIカラーマッチングでシーン間の色統一が自動化。DaVinci Resolve、Premiere Proと連携可能。

fylm.ai:クラウドベースのAIグレーディングツール。NeuralFilmAI、NeuralToneAIで映画的な質感を自動生成。Premiere Proとワンクリックで同期。

Color.io:AIが生成したカラーグレードを3D LUTとしてエクスポート可能。DaVinci Resolve、Premiere Pro、CapCut、Photoshop、Lightroomなど幅広く対応。

肌補正・ビューティーAI

Evoto AI Video Editor:ワンクリックでカラーグレーディングと肌補正を同時に適用。参照画像に色を合わせるAIマッチング機能も搭載。

YouCam Video:動画に直接メイクを適用できるAIアプリ。美肌補正から髪色変更まで対応。

Wink AI:1億人以上が利用するAIビデオ強化ツール。ぼやけた動画の復元、ワンタップ美肌、顔認識による個別補正が可能。

オブジェクト除去・背景AI

HitPaw Video Object Remover:AIが動画内の不要物をフレームごとに追跡して自動除去。痕跡を残さず自然に消去。

Vmake AI:グリーンスクリーン不要で背景を自動除去。バッチ処理で複数ファイルを一括処理可能。

Adobe Express:ワンクリックで動画の背景を透明化。Adobe Stockの素材や独自の背景に差し替え可能。

Unscreenの終了とCanvaへの移行

人気の背景除去ツール「Unscreen」は2025年12月1日にサービス終了。公式後継としてCanvaの動画エディターが推奨されています。

実践:動画レタッチのワークフロー

基本的なワークフローを紹介します。

Step 1: 素材の取り込みと整理

  • プロジェクトの作成
  • 素材のインポート
  • タイムラインへの配置

Step 2: カラーコレクション

  1. シャドウの調整(黒つぶれを防ぐ)
  2. ハイライトの調整(白飛びを防ぐ)
  3. ミッドトーンの調整(全体の明るさ)
  4. 色温度・色かぶりの修正

Step 3: カラーグレーディング

  • LUT(ルックアップテーブル)の適用
  • 色相・彩度・輝度の微調整
  • シーン間の色の統一
LUTは強度を調整する

LUTをそのまま100%適用すると効果が強すぎることがあります。「強度」パラメータで50〜70%程度に抑えると自然に仕上がります。

Step 4: 肌補正・ビューティー

  • 肌検出マスクの設定
  • 滑らかさ・テクスチャのバランス調整
  • 必要に応じて部分的な修正

Step 5: オブジェクト除去・仕上げ

  • 不要物のマスキングと除去
  • 最終的なトリミング・スタビライズ
  • ノイズリダクション

Step 6: 書き出し

  • 用途に合わせたコーデック選択
  • 解像度・ビットレートの設定
  • レンダリング

写真レタッチャーが動画に挑戦するメリット

メリット
  • 色感覚・審美眼がそのまま活きる
  • 仕事の幅が広がる(SNS・YouTube案件)
  • AIツールで技術ハードルが下がっている
  • 動画編集者より「色」に強い差別化
デメリット
  • 新しいソフトの学習コスト
  • マシンスペックが必要
  • 納期が写真より短いことが多い
レタッチャー
レタッチャー

写真レタッチで培った「色を見る目」は、動画でもそのまま武器になります。カラーグレーディングは本質的に写真の現像と同じ。ソフトが変わるだけで、やることは似ています。

まとめ

  • 動画レタッチ:カラー補正、肌補正、オブジェクト除去などの後処理作業
  • 静止画との違い:フレーム単位の処理、マスク&トラッキングが必須
  • 主要ツール:DaVinci Resolve(無料で業界標準)、Premiere Pro、After Effects
  • AI活用70%以上のスタジオがAIツールを導入
  • 写真レタッチャーの強み:色感覚・審美眼がそのまま活きる

動画コンテンツが主流になる中、レタッチのスキルを動画にも広げることは、キャリアの幅を広げる大きなチャンスです。まずは無料のDaVinci Resolveから試してみてはいかがでしょうか。